▽過去の詩集 第1期:名前の無い詩41-60
▽第1期:名前の無い詩 41月歌う影に太陽笑う
流れる風は空を洗う
月笑う影に太陽歌う
静まる音は闇に染まる
日の下に戯れて
月の上に玩び
二十四の崩落と
万の破滅
2007/3/29(木) 10:32
▽第1期:名前の無い詩 42
夢にまろび現に嘆き
砂の目 風の耳
遥か遠き千里先
一つ進みて振り返り
二つ進みて下を向き
三の四の五の歩みを止めて
一つ戻りて思いふけ
二つ戻りて立ち止まる
前にも後ろにも行けぬまま
2007/5/31(木) 18:29
▽第1期:名前の無い詩 43
霧に紛れた隔絶へ
消える影は闇
空の無い世へ
既に日は夜の余興
幻に狂える時間へ
訪れる時は無限
現の迷い子と
さぁ、私の手を取りなさい
光は眩しく相応しく無いのでしょう?
えいきゅうのやみへ
ゆきましょう
2007/5/31(木) 18:34
▽第1期:名前の無い詩 44
幾ら言葉を重ねても
夢に幻想を積み上げても
ただ自分の無力を感じるだけ
円を描く線路の上を
終わりは無いと知りつつも
ただ走り続けて疲れ果て
重ねたものが崩れるのは
何時だろう
足が動かなくなるのは
何時だろう。
2007/5/31(木) 18:37
▽第1期:名前の無い詩 45
十字路に十字架突き立てて
遠退く喚声 永久の嘆声
磔の傷 嘲笑の痛み
捧ぐ命は罪人の命
そそぐ罪は只人の罪
2007/5/31(木) 18:41
▽第1期:名前の無い詩 46
道なき道に道標立て
後追う者に知らせよう
私はこちらへゆくと
気づかないだろう
劣化した道標の上に
新たに道標が置かれることを
2007/5/31(木) 18:45
▽第1期:名前の無い詩 47
徒花のような空回り
助けようとして助けられ
許そうとして断罪し
それでも尚ここにいる
幾つの過ちを
幾つの罪を
数え切れないほどに
結局は此処に還ってくる
「此処」に
2007/5/31(木) 18:48
▽第1期:名前の無い詩 48
岸辺に林に戯れて
空と地中を弄び
人はそれらを崇めたて
人はそれらを神と呼ぶ
有限の故に
無限のように見え
破壊し時に茫漠とし
創造し時に束縛し
有らざる者に帰還を
2007/6/8(金) 20:12
▽第1期:名前の無い詩 49
砂の城を飾り立て
人形の町を作りましょう
木の驢馬を駆り立てて
無意味な争いを始めましょう
結わえた鎖を引き連れながら
猟犬の餓えた吠え声を響かせて
今更ながらも気づかせる
童の遊戯はいつしか
現となり果てたと。
2007/6/8(金) 20:17
▽第1期:名前の無い詩 50
錆びた鎧の無機質を
部屋の隅の蜘蛛の巣を
かつての姿も趣も無い
孤独の城に孤独の人
煤が壁を舐めて
黒く暗く染め上げて
夕日が射して
紅く赤く色づいて
蔦の奥 茨の前
独りたたずみ待ち続け
2007/6/8(金) 20:21
▽第1期:名前の無い詩 51
雨の降りる天を
傘閉じて見上げ
涙の筋道消して
冷たいしずくに
何もかも流されてゆけ
手のひらの一粒
ただ飲み干して
記憶の連鎖の傷
鈍い痛みを残し
一つだけ咲き誇る百合の白は
無邪気な命をさらけ出していた
2007/6/15(金) 17:51
▽第1期:名前の無い詩 52
三日月の欠けを喰らう犬と
夜風の響きを呼ぶ魚
主の紡ぐ糸にひかれて
引きずる跡を道として
渇いた砂地を延々と
壊れた荷台を鬱々と
道程の記憶は夢のように
太陽の円をなぞる猫と
砂の風を吹き上げる鳥
しもべを戒める荒縄が
通り過ぎた道のりが
光が目を灼き尽くして
色が現を非現実にして
終わり無く続くような丘
始まりの時は忘却のよう
2007/6/15(金) 17:52
▽第1期:名前の無い詩 53
赤い鈴の音響く
半永久な反響の中
漆黒の手の冷たさを
積まれる死人の上
白い虚ろの満ちた心
鈴を左手 刃を右手
箱庭の中の
小さな、小さな
グランギニョル。
2007/7/12(木) 16:02
▽第1期:名前の無い詩 54
草原に迷う子羊の鳴く声
十を数え終えた狼の遠吠え
鬼ごっこを始めましょう
日に揺れる影
赤黒く染まる純白のワタと
腹を満たした鬼の優越
終わりを声高く告げよう
至福の夢は事切れて
2007/7/12(木) 16:05
▽第1期:名前の無い詩 55
孤独に枯れた花のように
誰も知ることはない
冷たい手で 触れた
その 記憶すら 程遠く
薄れた 五感
ただ 静かに 手を 差し伸べて くれる
私 だ け の
死神さん
2007/7/12(木) 16:08
▽第1期:名前の無い詩 56
思考回路行方不明
カエラナイイチビョウイッポ
永久不完未完成
ユルガナイゲンザイリロン
喪失者失楽者集合
コワレナイマボロシキオク
全末路推定死亡
ノガレラレナイコノサキミライ
2007/7/12(木) 16:12
▽第1期:名前の無い詩 57
双対の矛
映り姿を割る切っ先
相対の目
その場を占める沈黙
川を流れる水と
逆らい続ける生き物
まるでその抗いのように
天を覆う雲と
揺られ行く風
まるでその戯れのように
塵が地を濯ぐ
衰退の足音を僅かにしのばせながら
2007/8/2(木) 12:32
▽第1期:名前の無い詩 58
謡う窓辺に霧うたげ
さ迷う花弁に虫群れて
寡黙になった木々の上
泣きじゃくる空の下
欠ける名は待ち焦がれる
追記されし最後の文字
割れた窓辺に我に返り
霧散した虫に堕されて
再びざわめく木々の上
涙枯れ果てし空の下
それに名を与える最後の
久遠の約定を
2007/8/2(木) 12:36
▽第1期:名前の無い詩 59
枯野の花を焼きましょう
其処に在ることを記憶に焼き付けて
砂地の陽炎を打ち払いましょう
無きものに惑わす記憶を払いのけて
天使の疑い 悪魔の信仰
誘惑する嘘の日を
拒絶する真の月を
古城を映す水のように
2007/8/2(木) 12:40
▽第1期:名前の無い詩 60
闇に歪みし朧月
夜道の中程 死天使の領域
只人に映らぬ虚の鏡
其処に在らぬ背の君
沈黙に染めし言葉の刃
爪立て抉り 歓喜の血筋
迷路に立ち尽くすままに
断崖に身を投げるままに
永き久しき由縁に繋がれて
逃げることの出来ない輪廻に踊り続けましょ
2007/8/13(月) 10:23
2011/12/8(木) 01:18