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私は最近、自慰行為にハマっている。
それも、人がやっているのを見るのにハマっているのだ。
勿論、自分がそれをやるのも好きだ。
何故、好きなのかは言うまでも無い。
気持ち良いからだ。
今日も学校の付き合いで自慰行為をしに行く事になった。
何処から出しているのか解らない程、高く色っぽい声を出す者。
熱く情熱的な声を出す者。
恥ずかしながらも進められてやってみる者。
激しく動く者。
誰一人、それを気にするものはいない。
何故なら、皆、自分自身の自慰行為にふけるからだ。
私も前まではそうだった。
しかし、彼女の吐息を聞いてから私は人の自慰を気にかけるようになったのだ。
彼女の吐息はなんとも艶っぽかった。
まるで耳をそっと吹かれているかのようにこそばく気持ち良かったのだ。
そう、感じた。
その日から私は人の自慰をとてもよく観察する様になったのだった。
人の自慰で気持ち良くなれるというのならばそれほど楽しいものは無い。
自身の下手くそな行為より、上手く自分の好みの人の行為を見ている方が数倍良い。
小さく薄暗い部屋で今日も各々が自慰を始める。
一番最初の人は、あまり上手く無い私から見ても下手だと解る。
高い声を出し激しく身体を揺らす。
なんとも、気持ちよさそうな顔をしている。
正直、見ている私からしてみれば気持ち良いものではない。
だけど、彼から言ってみればそんな事どうでもいいのだ。
なにせ、自慰なのだから…
そう、自慰とは自己満足を得る為に行う行為。
よって、人など関係無い。
自分さえ気持ち良ければ良いのだから…
次の人は恥ずかしそうに細い声で鳴く。
私はこういう奴が嫌いだ。
するのならば堂々とすれば良い。
相手の反応を一々気にしていたら自慰なんて出来ない。
自分が気持ち良くなれば良いのに人の反応を気にしているのが非常に気に喰わない。
それとも、照れるのが可愛いと思っているのだろうか?
私は深く溜息をついた。
それから、30分程過ぎた。
ずっと、人の自慰を見ているだけだった私に友人が話しかけてきた。

「せっかく、来たんだからお前も何か歌えよ。」

私はやむなくマイクをとった。

(完)
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