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かたみ「尺五寸の柄のなぐり」

実はここに私の友人のことを書くのですが・・・・
劇団の同期、ロケ先で死んだ友のことを、しかし文章を綴れないのです。
思うように・・・・
彼の名は、トノヒロ・コウジ。
子供向けではあったけれど、高い人気のテレビドラマ
『怪傑ライオン丸』の敵役・虎ジョウノスケが彼でした。


 
 「明日、朝一だから、帰るな」と彼。
 「おお、ありがとう、なぐり。借りるな。」と私。
 「二泊だから、稽古初日には間に合うよ」といつもの笑顔。
 「そうか、気を付けて」
十二月に入ってなんとなく騒がしく、忙しない、
新宿の線路脇の行きつけの飲み屋での・・・・・
  生の焼酎一杯四十円 炭酸一本三十円 トマト半分に粗塩三十円
  芝居の話を 舞台の夢を あつく語り合った私達の第二の稽古場
もう四十年近く前の彼との最後の会話である。


広島県三原市生田町。
彼を荼毘に伏して、その足で彼の取り残しのツーカットを、
代役しに東京のロケ現場へ向かった。
十二月の早朝の多摩川の水は冷たかった。
髭をきれいに剃って、彼に、虎ジョウノスケになって・・・・


なんだか気の会う、仲の良い、という関係から、
お互いに少しずつ分り合う関係に、
「一生付き合うだろうなぁ、こいつとは」と思いはじめた矢先の彼の死・・・・
かたづかない気持ちと、『尺五寸の柄のなぐり』と、
語り合った夢と、が残って・・・・・



そして・・・・今日
「トノ、あのな・・・・」と私
「・・・・・・。」といつもの笑顔の彼


                       


                       戸野廣浩司 記念劇場オープンによせて
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