空へのこたえ 謝罪
 僕は自分の部屋のベッドでマンガを読みながら、補習に友達が来なかっただけで腹が立ってしまう自分を憎たらしいと思った。謝らなくてはいけないのは僕なのに、心の底では恭太が謝ってくれることを望んでいた。
 今度学校で会ったらどういう顔をすればいいのか、恭太とケンカをした経験が無かったので、分からなかった。微笑むだけでは自分が納得しないし、かといってだんまりしているのも申し訳ない気がする。


「結局、まだ怒ってるの?」
 先に声をかけてきたのは恭太の方だった。
 僕は予想していなかったことに少し戸惑いつつ、一生懸命に言葉を選んだ。
「恭太は怒ってるか?」
「悪いのは僕だから、怒ってない。怒鳴られた時も、なんか……自分を責める前に、納得してた。言ってたことは間違ってなかったし」
 恭太は僕をかばっているのだろうか。
「だから俺が謝ったほうがいいよな。ごめん」
 その言葉に、素直にうなずいた。
 たった三文字の一言にこめられた恭太の思いは、なんとなくだけれどとげとげしていた僕を安心させてくれていた。
「けどさ……仕方がなかった、っていうのも分かってほしい」
 思わず耳を疑った。
「あれだって自分のためだろ?電話したとき、補習は振り替えにするってちゃんと先生に言ったし。次からは一緒に行くようにするから」
 恭太は休み時間終了五分前のチャイムをきくと、ニコリと笑いかけて教室の方へ体を向けた。恭太は謝りながらも、どっちかと言えば授業を大切にしたいようだった。恭太が僕に嘘までついて塾へ行っていたのは、自分のためだ。
 それが恭太のためになるのであれば、友人として納得してあげたい。
 けれど、それはただ単に僕と一緒が嫌なのではないか?自分のことしか考えていないのではないか?
「恭太」
 僕は呼びかけていた。
「今度の補習は、行かなくていいように頑張るから……」
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