空へのこたえ 切磋
 恭太に宣言してからしばらくして、次の単元テストがあることが知らされた。今度の範囲では、授業で集中してノートをとったり、手をあげたりなど努力をしたから、点数はきっとあがっているはずだ。
 恭太とは普通に話すようになったが、どこかぎこちなかった。それはお互いに気持ちの悪いものだったから、いつのまにかあまりはしゃがなくなり、無難な話題だけで済ませたりした。
「……雨、降りそうだね」
「そう、だな」
 次の授業はなになにだな、あの先生嫌だよな――他愛無い、そして味気ない会話が、僕たちの間で繰り返された。そのことについて、お互い触れたりはしなかった。かえって雰囲気が悪くなるからだ。
 その分、勉強に励んだ。いつもは親に隠れてさぼっているばかりの通信教育の教材も、すみからすみまでやり遂げた。おかげで今までよりも漢字テストの点数もあがったし、先生から「また補習だなぁ」とからかわれることもなくなった。
 努力することでいいこともある。そのことがよく分かった。
 その反面、恭太に半ば対抗意識も燃やしていた。
「今度の補習は、行かなくていいように頑張るから……」
 そう宣言したことで、恭太は僕に嫌悪したかもしれない。同じように対抗意識を燃やしたかもしれないし、逆に動揺しているかもしれない。
 けれどそれは恭太の問題だ。僕は、自分の力を試すことで何かがかわると信じきっていた。いつまでも補習友達というランクでありたくなかった。
 そして、それはきっと恭太も同じであると思っていた。


 単元テストも無事に終了し、答案も配られ、いよいよテスト返しの時間がやってきた。
 僕の名前は、数学の東谷先生によみあげられた。僕が取りに行くと、ニコリと笑った。


「どうだった?テスト」
 授業が終わるなり、恭太が近づいてきた。僕はテスト用紙の点数のところを指した。
「ど、どうした?お前、これ、本当に?90点って……」
「補習、行くの?」
 恭太は、少しとまどってから首を横に振った。その顔は、喜びとも優しげとも受け取れるいい顔だった。
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