空へのこたえ 解答
「前の補習がきいたのね。ただし、これは次のテストまで維持するのよ。そうしないと今回頑張った意味がないですから」
 東谷先生には褒めてもらうことができた。
 もちろん、僕らが補習によばれることもなかった。
「補習組脱出だな」
 僕は素直に嬉しくて、大きくうなずいた。

 恭太とはそれから普通に話すようになった。普通とは、ぎこちなくもなく、わざとらしくもない。ただ自然に、互いが必要する分だけの会話ができるようになった。
 ここ最近、いや、今回の単元テストで、僕と恭太の間で何か不思議なことがおこったのだろうか。ただ僕らは思い違いなどをしただけだ。面とむかって喧嘩をしていると感じたこともなかった。けれど、僕らはそれぞれ相手に怒っていたことは間違いない。
 でもそれについては考えようとは思わない。それは恭太もそうだと思う。
 いちいちこんなことで深く何かを考えていても、仕方がないような気がするのだ。
「カッコいいこと言うつもりないから。今時はやらないし」
 恭太は東谷先生に褒められたあと、僕にそう言った。同感だ。
 喧嘩をして、仲直りをする。それだけのことに何かをつけたすつもりはない。漫画の中ならばともかく、友達同士を嫌に思うことなどたくさんある。むしろ、ずっと仲良くいるほうが難しいのではないか。
 こたえは分からない。
 恭太のこたえを知ろうとも、スクールカウンセラーのこたえをきこうとも思わない。
 数学のこたえは、解法がいくらあろうともひとつである。ただ、人間の間でおこる疑問や質問に対するこたえは星の数より多い。自分のつむぎだしたものが、自分にとっての「こたえ」だと思う。
 こんなことを言うのはカッコいいことだろうか……。
 ただひとつ、空を見上げれば分かるかもしれない。広すぎて大きすぎて、端っこが分からないほどの空のどこかに、求めるこたえがみつかるかもしれないから。






<終わり>
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