▼あなたを忘れない
できない
私には できない
みんなの希望はあなただけ

紫苑

あなたなら できるはず

「それ、何の歌?」

ネズミが突然歌い出したので、紫苑はちょっとまばたいた。
涙が目尻からこぼれる。

「ウィキッド。ミュージカルさ」

ネズミはニヤリと笑う。けれどその眼差しはやさしい。

とうとうと歌いだす。


これきりもう会えなくても
心はずっと離れない
あなたは明るい笑顔で
私の心とかした

せせらぎを分かつ岩のように
砂の山流す水のように
私をかえてくれたの
忘れない あなたのこと


抜けるような青空の下、
涼やかな余韻が響く。

紫苑はしばらく沈黙していたが、ぎこちなく語り出した。


2人で過ごした時間は
僕の大事な宝物
君は大きな力で
僕の心を開いた

小舟をいざなう風のように
花の種運ぶ 鳥のように
僕をかえてくれた
忘れない君のこと


ネズミはちょっと目を見開いた。そしてふっと笑う。

「ごめんいつも僕達
    ケンカばかりしてた」

「素直になれなかったな」

なつかしい思い出だ、と笑う。

あなたは私の中で
永遠に輝き続ける。

「忘れない」
「忘れない」

顔が近づく。

あなたを…ずっと。

熱く激しく、
やさしい口付けだった。

「再会を必ず」
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