▼短編 本当に自分がいるべき場所

ぬいぐるみと女の子の小さいけれど優しいお話。




    ―――本当に自分がいるべき場所―――




    ある、小さな町の病院で、小さな小さな命が生まれました。

    その子は本当に小さな女の子でした。

    お母さんとお父さんは喜んでいます。

    お母さんは女の子にぬいぐるみを作りました。

    蒼いウサギのぬいぐるみです。

    左の耳に紅いリボンをして、紅いボタンの目をしています。

    お母さんは女の子に言いました。
 
    とっても優しい笑顔で言いました。

    
    ―――手作りのウサギのぬいぐるみをもっていると幸せになれるんですって…―――

    

    女の子は大きくなります。
 
    女の子はそのぬいぐるみが宝物です。

    だって、お母さんからはじめてもらったプレゼントですから。

    ぬいぐるみにとっても、女の子は大切な人でした。

    ずっと一緒だと思っていました。


    それでも女の子は大きくなります。
  
    そしてぬいぐるみはどんどん汚れていきます。
  
    女の子は大きくなります。

    ぬいぐるみは古くなります。



    女の子は大きくなって、違う遊びを覚えます。

    もう、ぬいぐるみとは遊ばなくなっていました。 

    ウサギのぬいぐるみは、女の子の記憶からだんだんいなくなってしまいました。


    ウサギのぬいぐるみは物置の中にいました。

    ウサギのぬいぐるみはとても悲しい気持ちでいっぱいです。

    でもぬいぐるみですから涙を流すことはできません。   

    ウサギのぬいぐるみはあるとき旅に出ました。

    現実なのか、夢なのかはわかりません。


    どこか遠いところにおもちゃの国があると昔女の子に聞いたことがありました。

    ウサギのぬいぐるみはそこへ行こうと旅に出ました。

    蒼いウサギのぬいぐるみは、どこにあるのかも解らない国を探しに旅に出ます。

   
    どうやって見つけましょうか…。

    そこはどこにあるのでしょうか…。

    どうやったら、そこへ行けるのでしょうか…。    


    でも、感じます。
    
    どこかで蒼いウサギのぬいぐるみを呼んでいるような、そんな声を…。

    ウサギのぬいぐるみは探します。


    ――本当に自分がいるべき場所を…――


    蒼いウサギのぬいぐるみは探します。

    そして呼ばれているのです。

    呼ばれるままに歩きます。

    
    気がつくとそこは女の子の部屋でした。

    女の子が蒼いウサギのぬいぐるみに笑いかけています。

    ほつれていたところは全部治されています。

    そして汚れていた身体は綺麗になっています。

    
    ずっと呼んでいたのは女の子だったのです。

    女の子は優しくぬいぐるみを抱きかかえています。

    どうして今、女の子がウサギのぬいぐるみを治したのかは解りません。    

    それでもいいと、ぬいぐるみは思いました。

    そして気付いたのです。


    ――女の子がいる場所こそが、自分が本当にいるべき場所なのだと…。


    蒼いウサギのぬいぐるみは、今でも、女の子と一緒にいます。

    そして、いつまでも、女の子と一緒にいたいと願っています。







        あとがき(と書いて言い訳と読む)
    初☆小説です。それなのになんですかこれは。
    中学校での授業で書いたものを改良したやつです。
    本当は絵本なのですが…。
    何故蒼いウサギなのかを説明しますと…
    僕が初めて作ってみたウサギの人形が、蒼いウサギだったのです。
    単純明快ですね。スミマセン。
    ここまで読んでいただきありがとうございました。
                      2006.4.2. 倉紗仁望





  
2006/7/25(Tue) 13:49
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