▼人形劇 第二話
   ◆◇◆


 何かが壊れていく音がする

 ガラガラ…   グラグラ…    ガラガラ…

 何の音…?

 何が壊れているの…?

    ―――――ワカラナイ―――――

 でも知っている… 

 僕は…これを知っている…

 でも、ナゼ?

 ワカラナイ…デモシッテイル…デモ…

 壊レテ行ク……

   ◆◇◆

「ら―――らら―――らる――」
 
 唄が聞こえた。
 教室…窓の外…誰もいないはずの屋上から…。
 惹きつけられるかのようにいつの間にか足をそちらへ向けていた。

「るる―――らる―――ら―――」

 知らない詩。でも知っている…。
 僕はこれを…知っている…?
 わからない…でも、そんな気がした…。
 錆び付いた屋上へ続く扉を押し開けると、強い風が吹き髪を遊ばせる。
 唄はまだ上の方から聞こえてくる。
 どうやら浄水タンクのあるこの上から聞こえてくるようだ。

「る―――らら―――ら――ら―――」

 何ノ唄ダッタロウカ…。
 何処デ聞イタノダロウカ…。
 ワカラナイ…デモ…懐カシイ…。

   ―――僕の中の僕が…何かを知っている…

 雨風にさらされ錆び付いた梯子に足をかけ、無意識のうちにその人物を確認しようとした。
 上まであがると、そこにいたのは見たことのない
 …といっても人の顔なんて覚えること自体面倒な祷頼にとってそんなこと関係ないのだが、おそらく同級生くらいの少女。

「…?」

 ひょっこりと顔を出した祷頼にその少女は大きな目を丸くした。
 しかし、次の瞬間にはにっこりと微笑んでいた。

「こんにちは。」
「…こんにちは…」

 挨拶をされて咄嗟に返してしまった。
 無口な祷頼に対しては珍しい行動だ。

「私の姿が見えるんですね。」
「え―――――――――…?」




               その出逢いから僕のすべては変わってしまったんだ…。





                                          
2006/7/25(Tue) 13:53
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