▼羽根の折れた天使 第十羽
クゥがいなくなった。

あれほど部屋から出るなって言ってたのに…家の中にもどこにもいない。

どこに行ったんだ…あいつ…っ


「っくそ…なんで勝手に…」


あいつが食べたいって言ったからチョコレートをこのくそ暑い中チャリをこいで買ってきたのに…

張本人がいないんじゃ、どうにもならない。

僕は甘いものが嫌いだ。

それでも、甘いものを好むクゥのためにいろんなものを買ってやった。

母さんは僕が買ってくるお菓子に驚いていたが、何もいわなかった。


「どこいったんだよ…馬鹿天使」


僕は必死になってチャリをこいでクゥが行きそうなところを探して回った。

そろそろ日が暮れてくる。

さすがにもう帰っただろうか…。

僕は汗だくになりながら、今おりて来たばかりの坂道を登る。


家について、部屋に戻ってみると…。


「おかえりなさいです。」


そう言って先ほど僕が買ってきたチョコを頬張っているクゥの姿…。

僕はそれを見て閉めたばかりのドアに背を預けてずるずるとその場にへたり込んだ。


「ど、どうかなさったのですか?」

「おまえなぁ…勝手にどっかに行くなってあれほどいったじゃねぇか…」


項垂れながら言う僕に、クゥはおろおろしている。

まぁ…戻ってきただけよしとするか…。

僕の心配は杞憂に終った。
2006/9/1(Fri) 13:57
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