▼羽根の折れた天使 第十一羽
今年の夏休みは、例年よりも暑く部屋に閉じこもる日々が続いた。ときどき、買い物には出かけるものの、やっぱり暑くて脱水症状になるんじゃないかと心配したほどだ。
それでも僕は元気で…なんだか最近クゥの方が滅入ってる様だった。
部屋の中にずっといたんじゃ、そりゃ気も滅入るか。
そう思って外に連れ出したくても…やはり暑い。
クゥは暑いのが嫌いだと何度も何度も僕に行ってきた。
おそらく、上と下では気温が違うのだろう。
「天界はとっても涼しくて、とっても過ごしやすい場所です。」
そんなこといわれても…と、僕はいつも苦笑いする。
気温が高いのは、僕所為じゃない…いや、地球温暖化にしてるのは人間だから、僕も悪いのか。
「なぁ…羽根って今どんな感じなんだ?」
あまりにも会話が無くて、最近全然気にしなかったクゥの羽根について聞いてみた。
クゥはふふんっと憎たらしく笑って立ち上がった。
まぁ、立ち上がっても僕の膝よりも下なのだが…。
「見てください!!」
そう言って誇らしげに胸を張ると後ろを向いた。
クゥの背中には痛々しい折れた羽根があった。
でも、コレは前よりもいいほうだ。
今でさえ折れているが此処まで真っ白じゃなかった。
前は雷に打たれて焦げ目がついていたんだ。
どうやら、順調に回復していると見ていいようだ。
「綺麗になったな?良かった良かった」
あんなに痛々しいクゥを見るのは嫌だったし、純粋に嬉しいと思った。
でも、クゥはなんか変な顔してすとんと僕に背を向けて座った。
僕は怪訝に思ったけど、あまり気にせずに読み途中の雑誌に目線を降ろした。
なんとなく…視線を感じながら…。
2006/10/10(Tue) 20:09