▼羽根の折れた天使 第十三羽


ゴロゴロと遠くのほうで真っ黒い雲がうなっていた


「くそぉ……」


日に照らされて焼けたアスファルトに思い切り右膝をすった僕は滲み出る血を見る

でも遠くの方で腹に響く雷の音

これは一雨来るなと右膝を抱えて傷をみる

ただでさえ暑いのに焼けたアスファルトの上に座り込む

尻が暑い

しかも右膝負傷

雨も降りそう

良いことがまるでない


「あ〜も〜この暑いのでストレス溜まるって言うのにまたストレスが溜まる〜〜」

「だ、大丈夫ですか?!」

「あぁクゥ…そうだよ、お前…羽根」

「はい!完璧です!」


アスファルトにへたり込んでいる僕の目の前にふわふわと浮かんでいるクゥを見て疑問に思っていたことを訊く

まぁ質問なんかしなくても見れば解るけれど…

人間ってどうしてわかっていることをいちいち確認したくなるのだろう


「そ、か…よかったな、治って」

「はい…」

「?」


治って嬉しいはずなのに、どうしてそんな顔するのか…

どうしてそんな、泣きそうな顔するのか

そういえば前もこんな顔をしていたことがあった

羽根が治りかけているといわれたとき…

確かあの時もこんな顔をしていた


――――――どうして…?


「それじゃぁもう、お別れです…ね」

「え…?」

「……羽根が治るまで、ここに居ても良いってことでしたので」


そうだ…忘れてた

僕はそう、約束してしまったのだ



 
2007/4/8(Sun) 20:20
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