▼羽根の折れた天使 第十四羽


「僕たち天使と彼方達人間は本来相容れなく生きていかなければなりません…
僕たちは彼方達人間の命を運ぶモノです
天使が長い間人間のもとにとどまっては、いけないんです……っ」


それでも、この夏休みの間はずっとクゥと一緒に居た

それが普通になっていた

終わりなんて来ないと思ってた

解っていたはずなのに


心が、それを否定していた―――…


「僕はもう天界に戻らなければいけません、もう…彼方に逢うこともない、でしょう…」

「なんで…また逢えるだろ?それにまだ家に居たっていいのに……」

「ダメです、天使にとっても人間にとっても約束はとてもとても強い鎖に縛られています
それと僕と過ごしたこの数日の記憶は修正されてしまいます」


天使と人間の間で結ばれる約束はつまり、契約

本来相容れることのないもの同士深入りしないように介入しないように線を引く

それが僕たちの間の「約束」

記憶が修正される

つまり僕とクゥが一緒に居たという事実は消えてなくなってしまう

そんなの―――悲しい

せっかく仲良くなれたのに

せっかく…友だちになれたのに


「やだ、よ…もっとクゥと一緒に居たいよ」

「でも…」

「なんでだよ…なんで治ってんだよ、クゥの馬鹿ぁ」


右膝がドクドク脈打つ

血が滲む

そこに水滴が落ちる

痛い

でも、それでも…


涙は止まってくれない


「ぼ、僕だって…離れたくなんか、忘れたくなんかないですっ」

「だったら…っ」

「でも、僕たちはあまりにも違います!」

「どこが違うって――――…っ」


その時ぽつりと雨粒が僕の頬に堕ちてきた



 
  
2007/4/8(Sun) 20:21
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