▼放課後スクープ!(+阿三)
 それは夏に入ったばかりの頃だった。俺がいつものように帰り支度をしていると、もう部活に行ってしまっているはずの泉が教室にいた。泉は俺がいるのをちらと確認してこっちに近づいてきた。俺はそれに気付いていたから泉が声をかけてくる前に質問した。

 「どうしたの?」

 いつも物事を率直に言う泉にしては珍しく一瞬ためらったあと口を開いた。

 「お前、今日暇?」

 歯切れ悪く言うその言葉に肯定の意味で頷いたあと、泉は部活で忙しいんじゃないかと続けようとした言葉が泉によって掻き消される。
すたんと床に座った泉に腕を引っ張られ自然と横に着地する。

 「あのな、このごろ阿部と三橋がよく部活に遅れるんだ。んで田島となんで遅れてんのか確かめようって話になったんだけどさ・・・」

 ぽつぽつと話し始める泉の話題に少し嫌な予感がした。

 「田島のヤツ今日授業中寝てたから先生に呼び出されちまって俺一人でやんなきゃいけなくなったわけ。まあ阿部と三橋のことは花井も気になってたみたいだから手伝ってもらおうかと思ったんだけどよ、ただでさえ人数足りない野球部のまとめ役がいなくなっちゃいけねーだろ?だから浜田につきあってもらいたいんだけど・・・いいよな?」

 半分脅しのような笑顔に必死にコクコクと首を縦に振る俺、自分の事ながら情けない。たぶん泉に逆らうことなんて一生できないんじゃないかと思う。
 泉は俺の意思を確認するとさっと立ち上がり素早く鞄を手に掴むと急げと目で催促する。まだ帰り支度の終わってなかった俺は教科書を慌ててまとめると折れ曲がるのも気にせず鞄に突っ込んだ。

 「終わったか?いくぞ」
「ちょ、いくってアテはあんのか?」
「いや、でも7組くらいしかいけるところが想像できないし、そこかなって」

 ・・・うわ、泉さんそれはアテがないって言うんですよ。けれど泉の言うことも分からなくはなかったので7組に向かう泉の後ろについて行く。実を言うと泉の言い分に納得したわけはもう一つあって、別に泉に話しても問題はないのだろうが判断に苦しむのでやめた。

 「居た・・・」

 泉が急に止まるので何かと思うともう7組に着いたらしい。確かに教室には電気がついていて人のいる気配がする。と、泉が前にいるので直接中を見れない俺は推測するしかない。

 「なあ二人何してんの?」

 俺が聞くと何故かがっかりしたような声で泉は

 「勉強、してる」

 と言った。その答えにほっとした俺は早急にここを立ち去ろうと泉に呼びかける。

 「なあ、勉強なら見逃してやってもいんじゃね?」

 花井になら俺も説明手伝うからと言うが、泉は断固として譲らない。

 「何言ってんだよ。勉強なんて休みの日にどっちかの家でやればいいじゃねーか。わざわざ放課後にやることねーだろ」

 ・・・だから、勉強と言うのは口実で・・・ほらその親のいる家ではやれないことを・・・、お願いします察してください泉さん。他の事ではびっくりするくらい勘が良いくせになんで分かんないんだよ・・・。
 そこも可愛いといえば可愛いけど・・・。
 そんなことを思っている間に泉が扉に手をかけていた、と思ったら次の瞬間開 けようとした姿勢のまま硬直した。
今の状況で考えられる原因は一つ、俺は泉の後ろに回るとそっと中を覗いた。

 「うわ・・・」

 中では阿部と三橋の濃厚キスシーンが繰り広げられていた。これは確かにショックだ。

 「なあ浜田、俺花井になんて報告すればいいんだ?」
「さあ・・・」

 尚もキスを続ける二人に軽くげんなりしながら、相談しあう。

 「・・・とりあえず中入って注意すっか」

 ショックから復活した泉が男らしくそう言う。・・・なんか泉カッコいいな・・・って逃避してる場合じゃなかったんだっけ・・・。はぁ、気が重い。
二人とも放課後の教室デートは控えめにしてください。ただひたすらそう思った。

 その後うっかり俺が田島に話した所為であっという間に二人のことは野球部中に広まってしまった。泉からは冷たい視線を受けるし、阿部からは呪詛を吐かれるしで何かひどいことになったけれど、三橋は阿部との関係が明るみに出たことに全くショックを受けず、むしろ嬉しそうにしていたのでよしとする。
 後日談はこのくらいで終わりだがいまだに阿部と三橋の放課後教室デートは続いている。次は俺と泉も・・・って睨まれた!・・・ショック。俺の受難は終わらない・・・。
         
 皆さんも放課後の教室には気をつけて。





 ふざけ過ぎましたごめんなさい。もうちょっとギャグじゃない予定だったのにな・・・。これのどこがハマイズなんだよ!
とりあえず尻に敷かれてる浜田とかっこいい泉を目指してみたけど見事に達成できてない ・・・。

2006.10.07



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