▼Sometimes, you make me surprised.
 時々、自分はすごく弱い生き物なんじゃないかと思うことがある。朝起きたときに嫌な夢のあとが残ってたり、飲み込んだ言葉が胸につかえたりしたときに叫びたい衝動に駆られる。叫んでどうにかなることではないと分かってはいるけれど。

 「泉。一緒帰ろう」
「おう」

 ふとこの男ならそんなときどうしているのかと思った。能天気なようでいて、その実人のことを考えて行動しているこの男は、泉よりもそういう気持ちを抱いたことがあるように思う。

 二人で自転車を並べて走っていると、また胸の辺りで何かがぐるぐると渦を巻き始めた。口を堅く閉ざして、外に声が漏れないよう必死に噛み締める。

 「あー!」

 突然浜田が叫びだした。びっくりして浜田を見ると、浜田は照れているのか微妙に笑っている。泉に文句を言われると思っていたらしく、何も言わないでいると少し不思議そうな顔をした。

 泉はそんな浜田のようすよりも浜田が自分と同じようなことを思っていたことに驚いていた。むず痒いような、照れくさいような感覚になったが、それは胸につかえることなくすっと溶けていった。

 「時々、叫び出したくなるときがあんだ。叫んだのは今日が初めてだけどな」

 浜田は弁明とも主張ともつかないことをぽつぽつと話し始めた。浜田が話せば話すほど泉の抱いていた思いと重なっていって、まるでもともと一つの感情だったかのように思えた。それはとても不思議だったけれど、理由は分かっている気がした。

 冬の冷たい風が泉の頬を強く打つが気にならない。もうすぐ別れ道だ、浜田はまた一人の家に帰っていくのだ。ちかちかと切れかけの街灯が寒々しく光る。

 「浜田、いつもはどうやって・・・」

 言いかけてやめてしまった。言葉が見つからなかったからだ。だが浜田には伝わったらしく、にこりと笑うとゆっくりと言った。

 「泉のこと考えたら全部どっかにいくんだよ」

 馬鹿だ、絶対脳が腐っているのに違いない。不思議だろ、と続ける浜田を軽く睨む。いつもこうだ、煙に巻かれた気がする。けれど自然と赤くなっていく顔はどうしても戻らない。

 分かれ道で浜田と別れたあとも、まだ言葉の余韻が残っていて、少し嬉しく思っている自分に苛立つ。今度のもやもやはしばらく晴れそうもなかった。





 ちょっと青春っぽく?今日は爽やかな気分で書こうと努力しました。が、浜田が気持ち悪いですね。なんか別人だこれ。でもハマイズはこんな青春過ぎる場面があってもいいと思うよ。だってハマイズだもん!(説明になってない)

2006.12.09
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