▼HAPPY! first You are my special
 今日は浜田の誕生日だ。枕元には、結局送らなかったメールのために置いていた携帯がある。十二時丁度に送るなんて恥ずかしい真似は一生できそうもない。机の上にあるきれいな包装が施された箱を確認してから家を出た。

 「はよっ」
「はよ」

 朝練を終えて九組に着くと浜田はもう来ていた。珍しいことだ、泉はそう思う。いつもチャイムと同時に着席しては照れたような笑みを泉に向けているのに、今日は泉が教室に帰るよりも早く来て、英語の予習をしている。

 「あ、泉。おはよ」
「おはよ。何してんの」
「ああ、これ?英語の予習。ちょっと気が乗ったから」
「へえ」

 泉が関心をなくして自分の席についても、浜田は何か言いたそうにしていた。その視線を軽く無視しながら引き出しに勉強道具を詰めていると、七組から田島と三橋が帰ってきた。二人は一目散に浜田の傍によると息急き切って話し出す。

 「浜田!お前今日誕生日なんだって!?」
「そ、そうだけど。何で」
「し、篠岡、さんが教えて、く、くれたっ」

 さすが篠岡だ。普通のマネジじゃ応援団長の誕生日なんて覚えていないだろう。そんなマネジを誇らしく思うと同時に、少し恨めしく思う。別に一番最初におめでとうと言いたかった訳ではないのだが、それでも他のやつらにそれを言われるかと思うと残念に思ってしまう。

 「黙ってんなよ!盛大に祝ってやるぜ」
「別に俺はそんなに祝ってもらわなくていいって」
「そうかあ?」
「そうだよ」
「まあいいや。とりあえずおめでと」
「・・・お、おめで、とう」

 田島たちに祝われて嬉しそうにしている浜田に腹が立ったし、自分の不実行を八つ当たりしている自分も疎ましかった。浜田は泉の視線に気付いたのか先ほどからこっちを見ている。だが泉はその視線を逸らすことで浜田を拒否した。

 一瞬見えた浜田の表情は酷く悲しそうで、泉は自分を責めることを止められなかった。なんで言ってやれないんだろう。浜田の前ではどうしても素直に言葉を話すことが出来ない。

 だから今日、浜田の家に行こう。そして絶対笑顔でおめでとうって言ってやろう。





2006.12.19
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