▼HAPPY! later You are my special
 家に帰って自分の部屋に入ると兄貴が机の上で何かをしていた。慌てて近寄ると、浜田にやる予定だったプレゼントの包装紙が破られている最中だった。

 「兄貴!なにしてんだよ」
「ああ?これ、食いもんかと思って」
「ちげえよバカ。何してんだよ」
「悪い悪い」

 たまに兄貴のことがすごく嫌いになる。今日も朝は普通だった兄貴が酷く邪魔なものに見える。すぎてしまったことは仕方がないので、家にある適当な紙を見繕って包もうと思ったのだが、どうしても手が不器用なので上手く包めない。やっとのことで包んだと思ったら、紙がぼろぼろになっていて、とても見れたものではなかった。

 気を取り直してケーキを取り出すとイチゴがいくつか食べられていた。きっとこれも兄貴の仕業だ。帰ったら絶縁宣言でもしようと思う。時計を見るともう八時過ぎだ、急いで夕食を食べると浜田の家に向かった。

 浜田の家はちいさなアパートでそこに浜田は一人で暮らしている。だから夜遅くても気兼ねなく訪ねられる。とんとんとんと階段を上って浜田の部屋の前に着くとドアノブをひねった。いつもならそのまますっと内側に開くはずのドアが閉まっている。どうやら浜田はどこかに出かけているらしい。

 大方近くのコンビニにでも買い物に行っているのだろうと思い、待つことにした。外は寒く、息を吐くと全てが真っ白になったが、昼の誤解をとくためならこのくらいはどうってことなかった。

 三十分、いや一時間は経っただろうか、あやふやな把握が苛立たしい。もう帰ろうかと腰を上げると階段の下に浜田がいた。こちらから見えたということはあちらからも見えるということで、泉が来ていることに気付いた浜田は階段を走ってあがってきた。

 「泉!?何でここに」
「・・・」

 泉が何も答えないでいると浜田が泉の顔を触ってきた。冷えきった泉の頬に、いつもは冷たく感じる浜田の手があったかくてまるで暖房器具のようだった。

 「こんなに冷たくなるまで何でここに?」

 二度目の質問に答えることをせずに、紙袋を渡す。中には不恰好な箱とケーキが入っている。浜田は袋の中身を見て、すごく驚いた表情をした。そしてその顔はすぐに笑顔に変わった。

 「泉、ありが・・・」

 浜田の言葉を途中で遮る。少し待ってと合図を送りながらゆっくり冷たい空気を吸った。笑顔には遠い、寒さに凍えた表情だっただろうけど。

 「浜田、誕生日おめでとう」

 「ありがとう」

 これからもずっと、なんて女みたいなことは好きじゃないけど、できればいつでも会える距離にいたい。その関係が何に変わってもきっと、俺たちは隣にいれる。





2006.12.19
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