▼雨の日に
六月に入って、急に雨の日や曇りの日が多くなってきた。雨がひどい日にはグラウンドでの練習ができず、校内ランニングや筋トレしかできない。どちらもあまり楽しいとはいえない上に、体力をとても使うので、雨の日が続くと俺たちはもうくたくただ。

今日は運よく曇りだったのだけれど、終わりがけから雨が降ってきて、そのまま今日のところは終わりにしようということになった。
いつもカバンに入れっぱなしの折り畳み傘をさして自転車置き場に行くと、いつものように浜田がいた。

「あ、泉。今日は早かったんだね」
持っていた傘を少し上にあげてそう言うと、俺のほうに近付いてきた。
「雨が降ってきたから、終わった」
「ふーん。ね、自転車どうする?」
そういえば、今朝は雨なんて降ってなかったから自転車で来たんだった。正直このまま置いて帰りたかったが、それでは明日の朝が不便だ。
「・・・押して帰る」
俺がしぶしぶそう言うと、浜田はそんな俺を見て笑った。
「なに笑ってんだよ」
「いや、すごく嫌そうな顔してる泉が可愛くて」
今すごく、目の前にいる男を殴りたい気持ちでいっぱいだ。浜田はたまに照れも恥じらいも無くあんなことをいうから、そんなことができない俺は少し悔しい気持ちになる。しかも浜田の場合誰にでも言ってそうでムカムカする。
「・・・浜田、お前脳みそ湧いてんじゃねぇの」
「ひど・・・!」
そんくらい、当然の仕打ちだろ。バカ。

 「あー、まったく雨なんていいもんじゃねぇな」
俺がいらいらして呟くと、浜田は笑顔で、
「でも、雨が降るから俺たちは生きてられるんだよ」
と言った。でも、その言葉は雨にイラついてる俺にとっては、ただの正論でしかないわけで、そんな理屈ではこのいらいらは治まらない。片手でバランスを取りながら自転車を持つのも疲れるし。

「も〜、泉。いいじゃん、雨。俺、好きだよ?」
「知るか、俺は嫌いだ」
浜田がいくら雨が好きだろうが、俺には関係ない。雨なんてうっとうしい。部活に支障は出るし、帰りは自転車を押して帰らなきゃいけないしでいいことがない。

「ええー。だってさ、今日みたいに泉と歩いて帰れるんだよ。いつもより長く一緒にいられて嬉しいじゃん」
そう言った浜田の顔はこっちが恥ずかしくなるくらい嬉しそうで、顔が熱くなった。

「ばっかじゃねぇの?俺はそんなこと全然嬉しくないし」
俺はそう言ったけど、真っ赤な顔でそんなこと言っても説得力ゼロだ。

横を歩く浜田が静かに笑うのを、顔をうつむけて聞いていた。





浜田に恥ずかしいこといってもらい隊の管理人です。ヘタレ攻めの不意に口にする甘い言葉が大好きです!もう、惚れるしかないよね!まあ、自分の書くのは微妙なのですが。
季節ネタも久しぶりですね。私は雨好きじゃないですけど。だって、自転車で駅まで行けなくなるし、カバン濡れるしで。学生で通学中の雨が好きなやつなんていませんよね?

では、ここまで読んでくださって有難うございます!

2008.06.08
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