▼ドタバタ★ハロウィン祭 1
学園パラレルです。
苦手な方は閲覧を控えてください。

 

「ハロウィンに向けて、風紀の取締りを強化します」

 今年もこの季節が来た。夜が少し冷えて、朝肌寒いと感じるころ、その戦争は始まる。元就は生徒会室の端に腰掛けぼんやりとしていた。前であっている話を一応といった感じで頭の隅に置いておく。去年もこの場所で同じような状況にあった。

 ぱち、ぱちぱち。元就の瞼が規則的に開閉を繰り返す。眉間によった皺は長い前髪が隠している。
 
 くだらぬ。何故我がこのようなことに参加せねばならぬのだ。まずこのようなことに生徒会が動くことも風紀の乱れだろう。他の者達はどうしてそうは思わぬのだ。全く下等なもの達の思考は理解できぬ。だがあの会長に直談判することすら面倒だ。ここは大人しく従うことにするか。

 頭の中は不満でいっぱいだがわざわざ訴える程ではないと自分をなだめる。だが真剣に取り組もうという気は全く起こらないので話が終わるまで外でも見ていようと思ったのだった。


 今月末、つまり十月三十一日はハロウィンである。大半がキリスト教徒ではない日本ではあまり浸透してないが、その存在は誰もが知っている。「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」と言う半ば脅迫地味た合言葉が飛び交う可愛らしい行事だ。
 いや、可愛らしいのは子供達が行っているからだろう。なぜならこの婆娑羅学園では例年恐ろしいほどの戦争が繰り広げられるからだ。

 先ずその理由を説明しなければならない。この婆娑羅学園ではなぜかハロウィンの風習が広く伝わっている。それについては創始者がキリシタンだっただの、この場所が元々かぼちゃ畑で余ったかぼちゃでジャック・オ・ランタンを作っていたからだの諸説さまざまあるが関係が無いので放っておく。
 閑話休題、そういう訳で毎年この学園では盛大にハロウィンが行われるのであった。

 しかしハロウィンという行事は体育祭や学園祭などのように正式な行事ではない。よってお菓子を持って来る等の行為は全て校則違反だ。
 ここでやっと何故ハロウィンの時期この学園が恐ろしいことになるのかという話に繋がる。早い話がこの学園のハロウィンとは一般生徒対生徒会なのである。お菓子の持ち込みを認めない生徒会とお菓子の持ち込みを認めさせたい一般生徒との激しい対立が繰り広げられる。
 
 以前何故そんなに皆お菓子を持って来たがるのか、と一般生徒側の友人に聞いたことがある。友人は皆お祭り騒ぎがしたいだけなんじゃない、と言っていた。元就はそれでも納得できなかったがきっとそんなものなのであろうと思った。

 さて、ところ変わって囲碁・将棋部室。元就は先程の話し合いでハロウィン当日の取締りを押し付けられて不機嫌だ。
 忌々しい、しかも当日の狂乱のさなかの取締りなど何の成果も挙げられぬのは自明の理だ。それもまた悔しく、元就の歯がぎりりと鳴る。我がやるからには失敗など許さぬ。良くも悪くも完璧主義者である元就は来るハロウィンに向けて、詭計謀略を練ることにした。なんだかんだ言って楽しんでいる元就だ。

 将棋盤の上にありったけの歩の駒を置いて、盤上に並べていく。ハロウィン当日まであと二週間と四日。





2006.10.13
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