▼ドタバタ★ハロウィン祭 2
 「えっと、詳しいことはこのプリントに書いてあるので読んでおいてください」

 前で三年の女子が司会をしている。わりと好みだ、少し気の強そうなとことか髪型とかが特に。
 誰かに似てるからだろうな。いや、でもあいつが女だったらもうちょっと胸は小せぇんじゃねぇかな。って何真剣に考えてんだ俺、流石にやばいだろ。
 あ、もう前で何話してんのか分かんなくなってきたぜ。

 まだ続きそうな気配のあった集会だが、リーダーが痺れを切らしたらしく、

 「命短し、人よ恋せよ。皆ハロウィンで恋人と急接近するぜ!」
「ぅおおおー!」

 とまとめて終わりとなった。

 この学園のハロウィンにはジンクスがある。ハロウィンの日に恋人同士がお菓子を交換できたら、その恋人と急接近できるらしい。
 そりゃもう、全校中のカップルというカップルがお菓子を持ち込もうとするから、生徒会の取締りが強化される。
 そしてその取締りに反抗するべく作られたのが「恋徒会」。ハロウィンの頃だけ活動する、一般生徒で構成された反生徒会組織だ。

 そして元親は何故かこの恋徒会に参加していた。理由は簡単、面倒くさいと言う理由でHRをさぼったら勝手に押し付けられていただけ。
 ついてないよな、と思いつつも自業自得だと諦めて恋徒会に参加することにした。が、テンションについていけない。人に言えないお付き合いをしている元親には、ハロウィンという行事に参加することは何のメリットも無かった。

 男同士でお菓子を交換してるとこなんて人に見られちゃまずいよな・・・。しかもそれ以前に元就がお菓子をくれるとは思えねぇし。
 折角のハロウィンなのにつまんねぇなぁ。・・・いっそのこと襲っちまうか?お菓子くれなきゃ悪戯していいんだしな・・・。
 いや待て、そんなことしたら折角積み重ねてきた元就からの信頼がパァになっちまうじゃねぇか!そんな恐ろしい代償払ってまで襲おうという気は起きねぇよ。

 はぁ・・・と吐く息も重い。ぼんやりと廊下に座っていると、すたすたと前を通り過ぎる人が居た。
 元就と同じ囲碁将棋部に入っている半兵衛だ。あいかわらず冷たい顔してやがる。きれいな顔してんのにもったいねぇな。
 ってあれ?気付いてない?気付かれてない、俺?ちくしょ・・・、むかつくぜ・・・。

 「おい半兵衛!何してたんだ!?」
「ん?ああ、君はこの前の野蛮人じゃないか。僕に話しかけないでくれるかな?」

 なんだこの仕打ち!俺何もしてねぇだろ?!大体俺の周りの人間はなんでこうも俺に対して酷いんだよ。

 「全く、僕はハロウィンの支度で忙しいんだからね・・・!」
「支度?」

 たしかこいつは社会科の秀吉一筋じゃなかったか?・・・恋人が出来たのか?くそっ、報われない恋に負けない同盟じゃなかったのか!?ってまた何言ってんだ俺。

 「お前、秀吉は諦めたのか?」
「何を言ってるんだ。世迷言は死んでからにしてくれたまえ。僕はお菓子の交換の約束を秀吉と取り付けたのさ。社会で百点を取ると言う条件付きでね!」
「へぇ・・・。って教師がそんなんで言いのかよ!」
「愛があればいいのさ。待っててくれよ!秀吉ぃ!」

 ・・・どいつもこいつもテンションおかしいだろ。でもいいな、俺も元就とお菓子交換してぇな。ひゅううと窓から秋風が侵入してくる。悲しさも二倍増しだ。

 何かいい方法はねぇかな。半兵衛みたいな手は使えねぇしよ。元就の性格を利用して何か・・・あ、いいコト思いついた。もしかしたらこれでお菓子貰えるかも知れねぇぜ!そうと決まれば下準備だ、野郎共集めて頑張んぞ!ハロウィンまであと八日。





 半兵衛初登場の巻。なのに性格おかしいって!だれこいつ、明らかにニセモノ・・・。

2006.10.23
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