▼ドタバタ★ハロウィン祭 3
 元就は機嫌がいい。なぜかというと元親の屈辱に歪む顔を見れるからだ。決着が付くのはハロウィン、まだ結果は分からないが、元就は自分の勝ちを確信していた。

 「待っていろ元親。我が最大の策を持って迎え撃つ」

 事の起こりは先週、元親が元就に約束を結ばせたことから始まった。約束の内容は恋徒会が生徒会に勝ったら、元就は元親とお菓子交換をするという目的が丸見えの下らないもので、元就はそんな約束など結ぶつもりはなく、断ろうとした。
 だがそのとき、これに勝てば元親の負けた姿が見れるのかと思い、約束を結ぶことにしたのだ。

 さて手始めに優秀な人材を集めにかかる。策を成すのに二、三、人材が足りないのだ。廊下を歩いていると佐助に出会った。相変わらず暇そうな男だ。そうだ、この男に協力させれば話が早い。

 「よぉ。相変わらず仏頂面してんな。そんな顔してたら幸せも逃げちまうぜ?」
「ふん、下らぬ。佐助それよりも明日、我のために働かぬか?」

 元就の計算によると佐助の勧誘成功は、さほど大変ではない。日和見的な考え方は油断できないが、面倒臭い性格ではない。

 「・・・報酬は?明日ってハロウィンだろ、生徒会手伝うんだったらそれなりの見返りをくれないとな」

 佐助の顔が一瞬本性を出したと思うとすぐにいつものへらへらした顔に戻った。喰えぬ奴よの、だがこやつの望みなど我には周知の事実よ。

 「かすがとかいう者のお菓子でどうだ」

 佐助のことだ、かすがにお菓子をくれなどと言い出せていないだろうと思ったのだが、ピシャリと当たってしまった。佐助の目が輝いている。

 「えっ、まじで?分かった、任せろよ」

 哀れな男よ・・・、だがまあ我の策が完成したので良い。明日が楽しみだ。

 ハロウィン当日の朝、校舎内は勿論中庭や体育館裏までもが賑わう生徒達でいっぱいだった。元就は人の群れを、少し離れたところから見ていた。いつ策を実行するのかは自分の目で見極めないといけない。

 一人の女生徒が中庭の端にいる男生徒にお菓子を渡そうとしている。今だ、元就は確信した。手に持った笛を強く吹く。ピーっと甲高い音がして、やがて消えた。すると今さっきまで他の生徒といっしょにお菓子交換をしていた生徒達が突如、他人のお菓子を奪い始めた。

 「うわ、なにすんだよ」
「ちょっと、私のお菓子盗らないでよ!」
「ああっ、せっかく先輩に貰ったのに・・・」

 あっという間に校内は混乱に陥った。勿論元就の策によってだ。生徒会のメンバー以外の生徒に依頼して、実行してもらったのだ。その間に元就は次の策のために移動した。

 「佐助。いま初めの策を実行してきた。そっちの首尾はどうだ」

 元就は宙に話しかける。するといつの間にか横に佐助が現れていた。佐助には教室内のお菓子の探索を依頼していた。

 「だめだ、何でか知らないけど全然無い。誰かがどこかにまとめて隠してるとしか・・・」
「そうか」

 元親だ、こんな小賢しい策を企てるのは元親しかいない。ということは隠されたお菓子の在り処を見つけることが出来たら我の、いや生徒会の勝ちという事だろう。

 「佐助、校舎内を隈なく調べてくれ。我も共に探そう」
「・・・全く友達遣いが荒いねぇ」

 ところが、校舎内を隈なく探すとは言ったものの、それに使える時間が無い。
 ハロウィンとはいえ、今日は平日なのだから授業はきちんと午後まで詰まっている。それに文句を言うものもあったが、あんなに大きな騒ぎを見逃してくれているのだから逆に感謝すべきだろう。
 しかし探す時間が無いのは非常に困る。隠してあるお菓子を放課後、元親に取り出される前に発見しなければ、また朝のように大掛かりなことになってしまう。
 短時間で見つけ出すにはヤマを張るしかない。あの男が考えそうな場所を考えるのだ。

 午前の授業が終わり、昼休みになった。元就は思いついただけの場所に全部行ってみたがお菓子は見つからなかった。途中廊下でお菓子交換をしている不届きな輩がいたので没収しておいた。
 没収したお菓子をどうしたものかと手持ち無沙汰で歩いていると、面倒の元凶が向こうからやってきた。

 「おっ、元就。久しぶりだな、ん?なんだそれお菓子か?何、俺にくれんの?」

 能天気に声をかけてくる元親に、元就は苛立ちを感じる。自分が仕掛けた策で今元就が苦心しているのが分からないらしい。

 「ふん、失せろ下衆が」
「非道ぇ・・・。全く、俺が何したってんだよ」
「黙れ諸悪の根源。貴様の愚劣な策の所為で我の休みを削らなければならなくなったではないか」

 とぼやく元就の言葉が聞こえなかったのだろうか。元親はにかと笑い、

 「ああ、そんなことか。大丈夫だって、元就ならすぐ分かるぜ。ヒントは俺の好きな場所」

 と事も無げにそう言った。じゃあな、と去っていく元親の後姿を睨みつけながら、必死にヒントの意味を考える。好きな場所、元親の好きそうな屋上やプールなどはもう探した。あとどこか、元親の好きな場所は・・・。とそこで昼休みの終わりのチャイムが鳴った。





 佐助の報酬、もとは伊達さんのお菓子だったんですけどね。その頃はダテサスだったんですが、いつのまにやら趣旨が変わりました。佐助にはかすがと幸せになってもらいたい!

2006.10.31
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