▼好事、魔多し
 『長曾我部殿 貴様に会いたくなった、すぐに来い 毛利』 

 「兄貴ー!毛利の旦那から文が届いてます」
「元就から?何の用だ」

 元親は、部下から文を受け取って開いた。文にはたった一文だけの文章が書かれてあった。
元親はその文を読むなり、部下を呼び出し出航する準備をさせた。顔は上気していて、鼻息も荒い。文を丁寧に保存して、すぐに瀬戸内の海へと向かった。

 瀬戸内海を渡ることは、昔に比べたらぐっと楽になったほうだけれど、それでもまだ波や風にさらわれる危険性は多い。一刻も早く中国に着きたいという気持ちと、自分達の安全が天秤に置かれている。指示を出す声を止めることはしないが、頭の中は柄にもない文を送ってきたあいつのことでいっぱいだ。

 「兄貴、もうちょっとで着きやすぜ」
「おう、おめえらありがとよ」
「お安い御用ですって」

 元就の本心を掴み取ることが出来ぬまま、城に着くと奥に通されてしまった。来る度に思うのだが、元就の城は元親から見るとこざっぱりしすぎている。無駄なものが排除されていて、それはそれで整って見えるのだが、なんだか落ち着かない気分になる。自分の城というのは安らぐためにあるのだから、もう少しゆとりをいれてみたほうが元就にはいいと思うのだ。

 「よう、来てやったぜ。珍しいじゃねえか、お前があんな文くれるなんてよ」
「ああ、元親。丁度いいところに来たな。もう少し近くに来い」

 元親は、てっきり元就がいつものように返してくるのだと思っていたので、そう優しく声をかけられて、不覚にもときめいてしまった。よく見ると、いつもは張り詰めたような表情をしているのに、今日は心なしか笑みを浮かべているように見える。

 元親はすぐさま元就に近付くと、肩を抱いた。元就は嫌がることをしないばかりか、頭を元親のほうへ寄せてきた。

 「・・・なあ元就。久しぶりに会ったんだからよ・・・」

 そう言って、元親は元就を押し倒そうとした。しかし、その時元親は妙な違和感を覚えた。元就がくっくと押し殺した声で笑っているのだ。気付いたときにはもう遅かった。

 「かかったな、元親」
「くそっ」

 なんと、元親を笑顔で迎えていたのは元就ではなく、サンデー毛利だったのだ。通りで、いつもと違うはずだ。元親は、禁じ手「縛」によって体の自由を奪われて、身動きが取れなくなっていた。

 「では、ザビー様の元に参るとしよう」
「うわああ、や、止めてくれ、元就!」


 元就の馬鹿やろう。
もう絶対、元就の文には引っかからねーぞ・・・!

ザビー城脱出計画に続く。




 なんか、思ったよりもギャグ風味に。
しかし、私は元親に酷いな。最初はもっと幸せにするつもりだったんですけどね。
まあ、途中少し幸せだったから、いいよね☆(よくないだろ)

2007.10.21
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