▼隻眼ヤンキー冷凍オクラに出会う 4
元親は落込んでいた。先日元就に言われたことがショックでまだ立ち直れて居ないのだ。あれからもう一週間囲碁将棋部室に行っていない。元就の姿も廊下で一、二回見ただけだ。

 「くそっ。むしゃくしゃする」

 なぜ元就がいきなり帰れといってきたのかが全く分からないのだ。確かに部活をさぼるという行為は元就の嫌いそうなことではあるものの、それだけが理由だとはどうしても思えないのだ。

 がやがやと教室内が騒がしくなった。どうやら授業が終わったらしい。元親は机の上におざなりに置いてあった教科書を直すとまた思考の中に入ろうとした。

 「元親!Hey!Come on!」
「ああ?」

 政宗が呼ぶので何事かと思ったら次は移動教室だったようだ、教科書とノートを持って廊下で待っている。慌てて準備を済ませると政宗のもとへ駆け寄る。教室を出ると今日の鍵当番なのか、かすがが睨んできた。手を合わせて謝るとぷいとそっぽを向いて先に行ってしまった。

 「You are late.遅ぇぞ元親」
「悪ぃ。なんかぼーっとしちまって」
「しっかりしてくれよ」

 渡り廊下を通って管理棟にある理科室に向かう。いつもは教室であるのだが今日は実験をするからという理由で理科室へいかなくてはならないのだ。
政宗は中学以来のつきあいで、気の置けない友人だ。中学時代にした約束で無理矢理バスケ部に入らされたり、休日いきなり呼び出されたりと散々な目にあっているが、それでもこの関係が壊れることは無かった。

 政宗に今さっきの授業の内容を聞きながら廊下を渡っていると、向かいから見覚えのある顔が歩いて来た。

 「Oh!アレ佐助先輩じゃねぇか。あ、元就先輩もいるぜ」
「え。まじで?」

 今さっきまで元就のことで悩んでいたのだが、自分の気持ちとは案外現金なもので悩みなどどこかへ吹っ飛んでしまった。
やはり落込むことは元親の肌に合わないので、もう気にしないことにした。

 「おーい。元就!」

 元親が呼ぶと元就は一瞬びくと反応したが、こちらに目を合わせずそそくさと佐助を置いていってしまった。

 「ありゃ・・・」

 佐助は困った顔で笑いながら元就を見ている。元親はまた苛立たしい感情に飲み込まれていた。なぜいきなり態度を変えたのか、なぜ元就は自分を避けるのか、分からないことだらけだ。

 「あ、そうそうチカに言っておきたいことがあったんだ」
「・・・何ですか」

 佐助がもっと近くに寄れと手招く。政宗の不機嫌そうな顔が目に入ったので、心の中で謝っておいた。佐助はいつもより少し真剣な顔で顔を近づける。

 「元就さ、今悩んでるみたいなんだよね。・・・待っててあげて」

 元就が悩む?元就は何に、何で悩んでいるのだろう。正直元就が何かに悩んでいるところなど元親には検討も付かなかった。元就のあの態度が悩みなど押しつぶしているような感覚に陥っていたのだ。全く気付かなかったと元親が考えている間に佐助は去っていた。

 「元親、いくぞ」
「おう・・・」

 案の定というか何と言うかそれからの授業には全く身が入らなかった。後で政宗にノートを写させてもらうより他は無い。
教室内に政宗の姿を探したがいない、どうやら先に部活へ行ってしまったらしい。元親は仕方が無いので体育館に向かうことにした。

 体育館へ向かっていると丁度政宗が外で走っていた。元親が声をかけようと寄るとなぜか校庭に元就が居るのが見えた。元親は元就に気付かれないように側を通り過ぎると部室に入っていった。

 あいつ何しにあんなとこに来てたんだ?元親は元就の行動の意味を理解しようとしたが、皆目見当も付かなかった。だが一ついえることは佐助が行っていたことは本当らしいということだ。しばらくそっとしておこう、元親はまだ校庭に佇んでいる元就を見つめながらそう思った。





 三話目終了ということで私の書く二人はどっちも鈍感なんで困ります。もっと鋭くなって!じゃないと話が終わらない・・・。

2006.11.08
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