▼書初めをしよう!先の陣(BASARAギャグ)
 ここはとある大広間、今日はここに大勢の武将が会している。ざわざわと落ち着きのない会場に、突如妙に明るい声が響いた。

 「はーい。皆さん明けましておめでとうございます。BASARA界のおかんこと猿飛佐助です」
「・・・・・・」
「ちょっと何か言ってよ、小太郎。俺が一人で寂しい人みたいだろ」

 現れたのは全身を迷彩柄の服に包んだ橙の髪の男と、素顔を隠した黒服の男だ。迷彩服の男ははりきっているようだが、いかんせん黒服の男が乗り気でない。いきなり現れた二人を何事かと見ていた人々はその息の合わなさに呆気に取られた。こんな司会を雇わなくてもよかったのではないのか、と。

 「え〜、一年の計は元旦にあり。というわけで新春書初め大会をここに開催します」
「なんだと!我はそのようなこと聞いておらぬぞ。長曾我部が日輪をあがめる会だというから来てみれば。おのれ、愚劣な!」
「はい、毛利さんちょっと黙っててくださいね」

 この男は意外と名司会かもしれない。そんな会場の感想はつゆ知らず、佐助は分身に何かを運ばせている。武将達はひょいと渡された棒と板を見てそれは大きな筆と硯だと理解した。そして下にしかれている一畳分はあるかおぼしきと白い紙はもしや・・・。

 「では、筆と硯が皆さんにまわったところで、書初めをされるお二人を決めてください」

 そう、これは超巨大書初め大会。大きな紙に大きな筆で今年の抱負を書き記す。だがしかしそれだけでは面白味に欠けるということで急遽、二人で筆を持つことにされたのだ。
 大きな筆を二人で操るのはかなり至難の業、それを乗り越えてこそ目標も叶うものという無茶な企画だった。ちなみに一番綺麗に書けた二人組には豪華賞品が出るらしい。

 「決まりましたか?では用意、始めっ」

 開始の合図で皆一斉に書き始める。司会の佐助と小太郎は会場の中継を始めた。まず最初は最北端から来ている、いつき軍の場所に行く。

 「はい、いつき軍にやって参りました。うわー、今日も親衛隊の皆さんお元気ですね」
「・・・・・・」
「だからなんか言えって・・・」

 いつき軍では書初めをいつきとよくわからない一般兵がしていた。いつきはいつも大木槌を振り回している要領で勢いよく書いている。

 「田吾作どん、『く』ってどんな字だったが覚えでるっぺか」
「いんや、おら字いなんぞ習ったことがなが」
「おらもだっぺ。でも頑張るだ、優勝して賞品手に入れるだよ」

 どうやらどこかで見た記憶だけを頼りに書いているらしく、ミミズがのたくったような字は、『ほうち』と書かれている。おそらく『ほうさく』と書きたいのだろう。佐助はいつき軍の勝利の不可能を悟った。日本の悲しい現実を後にして、次は軍神と呼ばれる上杉謙信の元に向かった。

 「謙信様。私は何をいたしたらよいのですか」
「そうですね。ではいっしょにかきましょうか」
「はいっ。ああ、謙信様と一緒に書初めが出来るなんて・・・」
「はいは〜い。かすがちゃん、そんな軍神より俺と書初めしない?」
「黙れ虫けらが」

 あえなく誘いに失敗した佐助を、小太郎はただじっと見ていた。泣きついてきた佐助をなぐさめるでもなく放っている。二人はどんな文字を書くのかと見ていると、軍神とそのつるぎの書く字はかなり流麗で優美なものだった。
 
 このぶんだと優勝も狙えるかもしれない、佐助の裏工作がなければ、だが。ちなみに書かれている文字は『しんげん』佐助もかすがも報われない。
 
 さて、気を取り直して向かうは奥州の竜伊達政宗の陣だ。

 「Hey!小十郎、行くぜ?」
「承知しました」
「Ready・・・Go!」

 粋な掛け声で紙の上に筆を走らせるのは伊達片倉の二人組だ。お世辞にも綺麗とはいえない男らしい文字で書かれた抱負は『祝脱モブ』。

 「ってそれ抱負じゃなくね!?」
「・・・・・・」

 どうやら小十郎がモブでなくなったことがとても嬉しかったらしい。この際そんなことは置いておくとして、書初めを終えた後、一般兵たちが不良よろしく『伊達政宗軍参上』と広間に書いているのはいただけない。

 伊達にやめさせるよう言い、次に訪れるのは佐助が仕えている武田軍だ。

 「ぅおやかたさまぁ!」
「幸村っ。慢心するな、心してかかれ」
「有難きお言葉。某涙で字が書けませぬ」
「相変わらず。お館さまも旦那もよくやるね〜」

 一箇所だけ熱気の違う場所で、暑苦しく繰り広げられているいつもの光景に、慣れていない他の者たちは大迷惑を被っていた。幸村が振り回す筆の所為で墨が服についたり、信玄の恫喝に驚いて文字がずれたりと被害状況は様々なものだった。佐助が幸村を諌めようと近付くと、筆が直撃して服が真っ黒になったばかりか気まで失ってしまった。

 「佐助!何をしている。全くまだまだ修行が足りんな」
「旦那の所為でしょ・・・」

 流石というべきか脅威の回復力ですぐに起き上がる。気付くともう書初めが仕上がっていた。『風林火山』ああ、世間の波に乗っ取ってってやつですか・・・。

 「主人公はお館さまじゃないらしいですけどね」
「何だと!それは真か佐助!」
「本当ですよ」
「幸村!目前のことで盲目になり真実を見逃すでない」
「はいっ。某まだまだ修行が足りませぬ」

 また始まった師弟の掛け合いについていけないとでも言うように佐助は先へ進んだ。その後を静かに小太郎が追う。次は織田軍の方に行こうとしていると向こうから騒がしい声が聞こえてきた。





 騒がしい声とは勿論あの二人の声です。文字数が多くて二つに分けなきゃいけなくなりました。面倒くさいですがよかったら、後の陣も読んでやってください。

2007.01.01
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