2010/11/22(Mon):プロポーズ
Posted 23:39
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<side Seiji> 正月を過ぎるとスーパーの店頭では節分商品が並び始める。 毎年節分の頃になると柳生邸で経験した苦い思い出が蘇る… ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー 妖邪界へ攻め入る前、張りつめた緊張を解そうと「節分だから豆まきしよう!」と言い出したのは遼だったか… その日、買い物担当の私が豆を買って来る事になったのだが。 買い物から帰るなり秀と純が人から荷物をかっさらって中身を物色しはじめた。忘れてなどいないのに失礼な奴だ。しばらく荷物を探していた純が 「あれ〜?征士兄ちゃん。豆はどこ?見つからないよ〜」と今にも泣きそうな顔で訴えて来た。 「何を言っている。今その手に持っているではないか」人をからかうな。と言おうとした所を秀の言葉が遮った。 「それは『落花生』だろ?豆まきの豆じゃねぇじゃん!!」 …秀も純も何を言っているんだ? 「豆まきって言ったら大豆だよ、征士」 …伸、お前まで何を… 「もしかしてお前の所は落花生まくのか?」 それぞれの顔を見ているしか出来なかった私の気持ちを察したように、当麻がかけてくれた言葉に無言で頷く事しかできなかった。 「普通…落花生ではないのか?」 「俺の所は大豆だな」と秀の言葉に私以外の全員が同意する。 軽い衝撃を受け呆然とする私に 「落花生だと床に落ちても中身は綺麗でいいかもな」と一生懸命フォローする遼をみて次第におかしくなってきた。 「そうだったのか。習慣が違ったようで悪い事をしたな。今から買い直してこよう」と再び出かけようとしたところを皆がとめた。 「実は俺、あの豆年の数食べるの苦痛だったんだよなー」 「大豆は後片付けが大変で…」 「落花生の方が投げ応えありそうだな」 「今年は落花生でいいじゃん!」 そうして始まった豆まき大会が盛り上がったのは言うまでもない。 ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー 「どうした?征士。顔がにやけてるぞ?」俺の事考えてた〜? なんて調子に乗ってる当麻を軽く睨みながら 「みんなで初めてやった節分を思い出していた。慣習の違いを思い知らされたな」と笑ってみせた。 「あぁ、確かに。俺だって夕飯に『太巻き』がなくて驚いたし」 そう言って当麻も笑っていた。 今でこそ全国的に『節分には恵方巻を食べましょう』という風習が根付いて来たが、そもそもは関西が発祥で『恵方巻』と言わず『太巻き』なのだと教えてくれた事もあった。 「今日の夕飯は太巻きと大豆36粒だな」 「えー。落花生にしてよ(笑)」 あれから20年もこいつと節分談義をするとは思いもしなかったな。また今年も無事に過ごせるように太巻きと大豆とメザシで厄払いしよう。 おわり →節分の行事ひとつで西と東で慣習が違って面白いですよね。 そんなひとつひとつをネタに柳生邸で少年達は盛り上がっていたんだと思いました。 |
ある朝、新聞を広げていた当麻が何かをみつけたらしい。 「おっ!これいい!ね、征士これ見てよ」 何か楽しい記事でも載っているのかと見てみると、そこにはとある企業の広告が載っていた。 『ご遺骨からダイヤモンドをお作りします』 「…何だこれは?」 縁起でもない。と言うかわりに思いきり睨んでやった。 そんな私をよそに当麻はさらに話しを続ける。 「今の技術ってすごいなー。遺骨からダイヤが作れるんだってよ! なぁ、俺のもダイヤにして征士が一生持っててくれない?」 言うと思った…このバカが。そんな顔して言うな! 「バカな。何故私がお前の死を見ねばならんのだ。そんな事はお断りだな」 「ははは…。まぁ『もしも』だよ。ほら、俺のうちって多分墓を建てないから。俺がいなくなったら無縁仏になっちゃうだろ?それに親父の方は他の兄弟が先祖代々の墓を守ってるから俺達が入る訳にはいかないしな。」 お前の所と違ってさ、寂しいだろー?そう言って笑う当麻を見て少し胸が痛くなった。 「仕方ない。その遺言聞いてやろう。 ただし、私が先に逝った時も同じようにしろ。いいな?」 「え…?だってお前のとこ立派な墓あるし…家族もいるし…無理だろ…?」 「本人の遺言なんだから構わないだろう。 それに…後にお前のダイヤと一緒に私の家で供養してもらえばいい。それなら寂しくあるまい?」 「ありがと、征士。…俺すっげぇ幸せ者だな。死んでからもずっと一緒にいていいの?」 「一緒に供養しないと成仏できずに伊達家の末代まで祟られそうだからな。」 「なるほど…それもいいかも知れないな!」 一瞬目を丸くして盛大に笑い出した。 「馬鹿者!私の家は墓の中まで厳しいからな。覚悟しておけよ」 そう言って二人の笑いが止まる事がなかった。 始めは冗談で話してたつもりだった。 でも当麻のこの笑顔は本物だ。こんな些細な事で当麻が安心できるならお安い御用だ。 二人ともボケが始まる前に遺言状を認めるとしようか。 * * * * * * * * * * * * * * 新聞広告に載っていたのを見て。 征士と違って当麻は一人っ子なのでこういった問題も抱える事になるのかな〜?と思ったのでした。 あ、当麻の事だから両親の遺骨は「残ってもしょうがないだろ?」とか言って散骨しそうです。 |