▼2011/1/2(日):★おすすめのミステリー小説「隻眼の少女」麻耶 雄嵩
このミステリーが面白い!名作ミステリだ。


●このミステリーがすごい(2011年)
     ↓
第4位「隻眼の少女」麻耶 雄嵩 (著)


古式ゆかしき装束を身にまとい、美少女探偵・御陵みかげ降臨!因習深き寒村で発生した連続殺人。

名探偵だった母の跡を継ぎ、みかげは事件の捜査に乗り出した―。


異常だ。

この作品に比べたら今までの麻耶の作品や数多あるミステリで探偵が騙ってきた推理など茶番だと思われるほどの圧倒的な完成度。

恐らくミステリ作家なら誰もがこうした作品を一度は目指すだろうが、誰一人為し得なかった作品だろう。

生半可な努力と思考力、発想だけではこの壮大な伽藍は築けまい。

筆者が処女作「翼ある闇」以降ずっと問題にしてきた命題が漸く実を結んだようにも見える。

この極点に達した麻耶雄嵩が、今後創作活動を続けていけるのかということだけが不安だ。

そして一読しただけでは私も気づかず恥ずかしい限りなのだが、この「問題」は単に事件の推理だけに適応されるのではなく動機を含めドラマ部分に密接に影響していることは間違いない。

静馬の感情やエピローグでのみかげの行動だけでなく、そもそも2003年の犯人の動機すら…そうした視点で見ると全く違った様相が見えてくる。

やはり異常な作品である。

とはいえ複雑で読者を突き放した作品ではないので、誰でもお気軽に手に取ってくれればいいと思う。

ドライな探偵と死相漂うワトソンの軽妙な掛け合いや茶目っ気に溢れる文章は読んでいるだけでも頬が緩む。


萌え巫女姿の探偵、訳ありで自殺願望ありのワトソン役の大学生が偶然(?)遭遇する古き信仰が残る旧家での連続首斬り殺人。

犯人は?

動機は?

その18年後にまた同じ事件が発生!模倣犯か?

それとも連続殺人なのか?

真相は?


著者の作品及び文藝春秋からすると単なる正統派で終わるわけないと思いながら読んでいましたが、やはり後味の悪さは用意されていましたね。

しかも従来の作品に勝るとも劣らない衝撃。

本格ミステリとして傑作のうちに完了出来るものを最後にひっくり返す、この読後の後味の悪さは毎回なんとも言えませんね、病みつきになります。

…という従来の作者の路線そのままであると了解してお読み下さい。

巫女さん姿の萌えな表紙のみで判断すると後でしっぺ返しに合います。

後味の悪い結末がアナタを待っています、でも間違いなく本格。


そして怪作。

傑作。

この作品に出逢えて、本当に良かったと思う。



★このミステリーが面白い、このミステリがおもしろい、おすすめの傑作ミステリー小説、最新の現代ものから古典的名作ミステリー小説、名作推理小説まで200冊以上のサイト★
     ↓
このミステリーがおもしろい。面白いおすすめの傑作ミステリー小説200冊以上のサイト
Posted 12:05
▼2010/12/30(木):★2010年「このミステリーがすごい」第1位:『新参者』東野圭吾(著)
東野圭吾おすすめミステリー小説、お奨めの東野圭吾のミステリー小説。東野圭吾の名作ミステリーの面白い作品。

おすすめミステリー作家のオススメ面白いミステリー、おもしろい傑作お勧めミステリー小説は『新参者』東野圭吾(著)だ。


2010年「このミステリーがすごい」第1位。


立ちはだかるのは、人情という名の謎

日本橋の片隅で発見された四十代女性の絞殺死体。

「なぜ、あんなにいい人が」と周囲は声を重ねる。

着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、未知の土地を歩き回る。

「この町のことを思い浮かべるだけで、忽ち様々な人間が動きだした。そのうちの一人を描こうとすると、そばにいる人々の姿も描かざるをえなくなった。まる でドミノ倒しのように、次々とドラマが繋がっていった。同時に謎も。最後のドミノを倒した時の達成感は、作家として初めて味わうものだった」――東野圭吾


東野圭吾作品の中でも、「加賀恭一郎シリーズ」はかなり好きなので、迷わず購入しました。

この小説の舞台は日本橋。

その一角で起こった絞殺事件を調べるべく、着任したばかりの加賀刑事は日本橋界隈のさまざまな場所に出向いていきます。

ただし、「営業マンの上着」から始まり、加賀刑事の見事な洞察力はそれまでの作品同様に見ることができますが、事件そのものの真相は、それほどビックリするようなものではありません。

しかしそれよりも印象深いのが、日本橋界隈の人々や、加賀刑事自身が見せる「人情」です。


全九章ありますが、第一章〜第八章までそれぞれ、加賀が訪れる日本橋の8か所が舞台となっています。

そして事件の調査のために訪れた加賀が、その手掛かりをつかむ様子だけでなく、彼の働きによってそこに隠されていた人々の「大切な人への想い」が前面に出てきたり、通い合っていなかった心と心が再び交流を始める様子などが描かれ、読んでいて非常に心温まりました。

どれも事件の解決に向けての「通過点」の一つに過ぎないのですが、結末が非常によく、それぞれの章がエピソードとして独立して成り立っています。

そして第九章のラストも、「心を通わせていたつもりが実はそうでなかった」という点では非常に考えさせられました。

最後に、加賀恭一郎シリーズはこれの前に、

『卒業 雪月花殺人ゲーム』★
『眠りの森』★
『どちらかが彼女を殺した』
『悪意』★
『私が彼を殺した』
『嘘をもうひとつだけ』
『赤い指』★

以上があります。

もちろんそれぞれ別の事件を扱っていますから、単独でも十分楽しめるのですが、他のシリーズ作品(特に★印)を読むと、加賀刑事の人物像がよくわかりますので別の楽しみ方ができます。
Posted 22:57
スポンサード リンク