2012/5/11(金):連載の的場さんはこんな人|
的場と知り合ってしまった当初は……出会えたことを幸運だと思っていた。今そんな言葉は死んでも吐きはしないが。というより、そんなことを想ってしまった過去を消し去ってしまいたいのだが、過ぎた過去はやり直しがきかない。いっそ記憶喪失になって的場のことなど忘れ去りたいが、それも無駄だろう。的場のことだ、面白がって話をひっかきまわした後私の記憶を元に戻すだろう。 ……本当に、的場は人間なのかどうか。それすら疑ったこともあるが、一応人間のカテゴリーにいるらしい。 妖も見る。鬼も調伏する。精霊と交信する……なんでもありだ。 人外魔境の生き物をありがたがっていた過去の私をぶん殴りたい。 まあ、私も幼かったのだから仕方がない。 幼いころから私はこの世のモノではないモノを、見た。 ただし、私以外にそんなモノを見ることができる人間には会ったことがなかった。 私一人がおかしいのかと悩んだこともある。気でも狂っているのかとさえ。 的場が、最初だったのだ。 私と同じモノを見ている相手は。 ……運命の神様とやらが居るのであれば、せめて妖を見ることのできる人間が他にももっといるのだと知ってから、その後で的場に出会わせて欲しかった。 しかし、初めてであった同じモノを見ることのできる人間。それが何故よりにもよって的場なのかっ! しかも的場は妖への対処法にも優れていた。 ただ妖から逃げることしか出来なかった私に比べて、的場は妖など涼しい顔で簡単に倒していった。 だから……、これは、あくまでたとえの表現ではあるが、当時の実に幼く世の中のことなど何一つわかなかった私に取っての的場は……ううううううう、言いたくはないが憧れの存在であった。 あああああ、抹消したい過去だ。 が、当時の無邪気な私はヒーローと出会ったとさえ思いこんだ。……馬鹿だ。当時の私を蹴倒してやりたい。 が、当時の私は自分から進んで的場について回った。 数多の呪文を駆使し、危険な鬼や妖を倒し、時には人間の世界ではない異空間のような場所へさえ赴いて戦う姿をキラキラとした目で見つめていた。……阿呆だ。 まあ詐欺にあったのだと思えば腹も立たな……いや、立つか。 出会った当初は的場もそれなりに猫を被っていたのだから、当時の私が的場の本性を見抜けなくても仕方がない。 思い出したくはない数々の仕打ちに出会う前に、的場などとは縁を切ってしまえばよかったのに。 後悔などしなかった日は無い。一瞬たりともない。 が、的場と出会ってなければきっと私は死んでいた。 それは、変えようのない事実だ。 悔しいが、事実だ。 「そうですか?出会わなければよかった?では……そうですね、今からでも遅くありません。名取、ちょっと死んでおきますか?」 これが的場のセリフである。 「死んだら死んだで私は構わないんですがね。名取の力は人間としてはそこそこ強いですから、死んでも魂は残ります。その魂を捕獲して私の使い魔にすることは容易いですからね。じゃ、ちょっと死んでおきましょうか?」 死んで、的場に隷属するくらいなら、苦い思いを抱いたままでも生きていたほうがマシだ。 そして、私が本当に寿命を終えて臨終を迎える前に、魂すら木っ端みじんに滅びるように完璧に死んでやるつもりだ。それまでな何が何でも生き続けてやる。 |
Posted 13:03