• 書きかけSSなど基本的に書き逃げコーナー。
▼2012/5/11(金):連載の的場さんはこんな人
的場と知り合ってしまった当初は……出会えたことを幸運だと思っていた。今そんな言葉は死んでも吐きはしないが。というより、そんなことを想ってしまった過去を消し去ってしまいたいのだが、過ぎた過去はやり直しがきかない。いっそ記憶喪失になって的場のことなど忘れ去りたいが、それも無駄だろう。的場のことだ、面白がって話をひっかきまわした後私の記憶を元に戻すだろう。
……本当に、的場は人間なのかどうか。それすら疑ったこともあるが、一応人間のカテゴリーにいるらしい。
妖も見る。鬼も調伏する。精霊と交信する……なんでもありだ。
人外魔境の生き物をありがたがっていた過去の私をぶん殴りたい。
まあ、私も幼かったのだから仕方がない。
幼いころから私はこの世のモノではないモノを、見た。
ただし、私以外にそんなモノを見ることができる人間には会ったことがなかった。
私一人がおかしいのかと悩んだこともある。気でも狂っているのかとさえ。
的場が、最初だったのだ。
私と同じモノを見ている相手は。
……運命の神様とやらが居るのであれば、せめて妖を見ることのできる人間が他にももっといるのだと知ってから、その後で的場に出会わせて欲しかった。
しかし、初めてであった同じモノを見ることのできる人間。それが何故よりにもよって的場なのかっ!
しかも的場は妖への対処法にも優れていた。
ただ妖から逃げることしか出来なかった私に比べて、的場は妖など涼しい顔で簡単に倒していった。
だから……、これは、あくまでたとえの表現ではあるが、当時の実に幼く世の中のことなど何一つわかなかった私に取っての的場は……ううううううう、言いたくはないが憧れの存在であった。
あああああ、抹消したい過去だ。
が、当時の無邪気な私はヒーローと出会ったとさえ思いこんだ。……馬鹿だ。当時の私を蹴倒してやりたい。
が、当時の私は自分から進んで的場について回った。
数多の呪文を駆使し、危険な鬼や妖を倒し、時には人間の世界ではない異空間のような場所へさえ赴いて戦う姿をキラキラとした目で見つめていた。……阿呆だ。
まあ詐欺にあったのだと思えば腹も立たな……いや、立つか。
出会った当初は的場もそれなりに猫を被っていたのだから、当時の私が的場の本性を見抜けなくても仕方がない。
思い出したくはない数々の仕打ちに出会う前に、的場などとは縁を切ってしまえばよかったのに。
後悔などしなかった日は無い。一瞬たりともない。
が、的場と出会ってなければきっと私は死んでいた。
それは、変えようのない事実だ。
悔しいが、事実だ。
「そうですか?出会わなければよかった?では……そうですね、今からでも遅くありません。名取、ちょっと死んでおきますか?」
これが的場のセリフである。
「死んだら死んだで私は構わないんですがね。名取の力は人間としてはそこそこ強いですから、死んでも魂は残ります。その魂を捕獲して私の使い魔にすることは容易いですからね。じゃ、ちょっと死んでおきましょうか?」
死んで、的場に隷属するくらいなら、苦い思いを抱いたままでも生きていたほうがマシだ。
そして、私が本当に寿命を終えて臨終を迎える前に、魂すら木っ端みじんに滅びるように完璧に死んでやるつもりだ。それまでな何が何でも生き続けてやる。



Posted 13:03
▼2012/5/2(水):情けない大人と強い子供
こーゆー話が書きたいですと言う書き逃げ。


「……平気、なの?」
そう聞いてきたのはアルフォンス。オレは笑顔で返事をした。
「何が?」
「兄さんは、大佐と別れて平気なの?」
「ああ、別に?」
「だってあんなに好きだって兄さんっ!大佐だって……。そもそも大佐のほうから兄さんに恋人になって欲しいとか言いだしたんじゃないかっ!」
オレにとってはアイツが初めての恋人で。
大佐にとっては何人目か知らないけど、今までの恋人に対する態度とは全然違うってくらいにすっげえ大事にされてたと思う。この辺はまあハボック少尉からの話でしか無いんだけど。恋人と軍務をくらべるのなら当然軍務優先。現在の恋人と別れても次に新しい恋人見つけるなんて簡単だってまあそうふうに薄情に付き合っていたらしい。
でもオレには違った。
すげえ大事にされてた。噂話なんか聞かなくても、オレが、それ実感してた。
オレは、大佐に、愛されてるなって。だから、好きになった。愛とか恋とか、そういうのよくはわからないけど、いつかアルフォンスの身体を取り戻したら、そしたらその後のオレの人生は大佐と共にあるんだって思ってたし夢見てた。
だけど、大佐がオレに別れと告げてきた。
正直、驚いたけど、オレは真顔で「ああ、了解。じゃ、今後は単なる後見人と被後見人っつうことで。あー、ちょっと待てよ?大佐と別れるってことは、後見人とかも大佐から別の人に変えることになるんか?変えるんならオレらの事情知ってる人の方がいいからグラマンのじーちゃんとかアームストリング少佐あたりでよろしく」って普通に言った。。
結構淡々とした声だったと思う。
大佐は、驚いた顔してた。
大佐の方がオレの言葉にショック受けてた。
大佐だけじゃない。大佐の部下であるみんなもそうだ。
「オレ、大佐にフラレたから。今度からアイツとオレは単なる上司と部下でよろしく」ってみんなに言ったら信じられないって顔、された。あのホークアイ中尉までもが絶句してたくらいだから、オレ達が別れるなんてコト、誰も想像すら出来なかったんだろう。
まあ、オレも、だけど。
だけど大佐との別れがショックかと言われれば、そうでもない。
というかむしろ平気。
「まあ、大佐から告白してきたっつーのは事実だけど。仕方ねえじゃん?っていうわけで、今後はアイツに気兼ねすることなくオマエの身体取り戻すことだけに専念する。今までごめんなアル」
「ご、めんってなにそれ。ボクのために兄さん犠牲にするなんてコトしたくなかっただけじゃないかっ!兄さんが大佐のコト好きならボクだって兄さんと大佐がつき合うことに反対なんて……」
「ああ、そうだな。ゴメン。でもまあもう別れたから気にすんな。つうわけで明日あたり西の方とか行かねえ?」
「ってもう旅に出るの?」
「ああ、いい機会だから。しばらくこのイーストシティに戻らなくても大佐に文句言えわれねえだろうしな。報告書とかは郵送するし。定期報告とか今までだったらちゃんとしねえとアイツうるさかったけど、適当にホークアイ中尉あたりに伝言頼めばいいだろうし。まあ、アイツ、後見人だけはやめないみたいだけど、もう別れたんだから、今までみたいに顔みせろとかそう言うのに煩わされることもなくなるし」
「兄さんは、それで、平気……なの?」
平気じゃねえのはオレじゃない。動揺してるのはアルフォンスにホークアイ中尉にはハボック少尉に……ってオレ達の関係を知っていたみんな、だ。
オレは別に平気。
強がりでもない。
大佐が嫌いになったとかどうでもよくなったとかでもない。
今でも大差のことはすげえ好きだ。
でも大佐が別れるって言ったから、な。
「だってオレ達もう恋人同士とかじゃねえし」
きっぱりと言う。
「それで……いいの?平気なの?」
「ああ、別に」
「別にって……兄さんだって大佐のコト好きだったんだろうっ!」
平気なオレにアルフォンスの方が苛立ってる。
「あー、好きっつーんなら今でも好きだけど?多分一生、オレ、アイツのコト好きだぜ?」
「え?」
「好きだけど、別れても平気。問題ない。気にしない。大佐がオレと別れて別の恋人作ろうが誰かと結婚しようが別に?」
強がりとかじゃなくて本当にそう。オレは平気。
「な……んだよそれ」
オレには確信がある。大佐はきっと1ヶ月ももたない。
「別れを切り出したのは大佐のほう。だけど、アイツ、オレに未練タラタラだから」
「なに、それ」
「16歳のコドモに手を出した。どうしようもない衝動で。だけど、アイツな、それ後悔してんの。未来あるオレに手を出して、オレの未来を閉ざして不幸にしていろんな可能性摘み取った。だから、俺を手放してやるのが大人としての愛情だ、なーんてすっげえ勘違いしていやがるんだよ」
ホント、馬鹿。
相手のためを想って別れるなんて、そんな自分自身に酔ってんじゃねえよってオレは言いたい。
でも、言わなかった。
すげえ苦しそうに「別れよう鋼の」って言ってきたんだ、大佐は。
死人みたいな青い顔で。
だから、仕方ねえじゃん?オレ、アイツのことすげえ好きだし。
別れたいんなら別れてやる。
その方が大佐の気持ちが楽になるんなら、あっさり恋人辞めて以前どおりの単なる上司と部下に戻る。
オレはな、それ、出来る。
多分出来ないのは大佐の方。
「オレと別れて、きっぱりさっぱり別の相手と幸せな未来作れるんならそれはそれでいーけどな。多分、無理。今きっとすげえもんもんと苦しんでるぜ?あっさりオレが別れを承諾したもんだからきっとオレの気持ちまで疑ってる。本当は、オレがアイツのコト好きなんかじゃなかったのかもしれねえとか。恋人同士になったのは大佐がオレに上官命令とかそーいうカンジになって、オレが、その上官命令断り切れなかったんじゃねえかとかさあ、きっとそう言うことまですげえ考えまくって勝手に一人で傷ついてるぜ?」
理解できないってふうに、アルフォンスは絶句した。
うん、大佐って馬鹿だよな。
オレのこと、大事すぎて目の前のことも見えなくなってんの。
大佐から別れようって言われた瞬間に、そういうこと、全部分かった。一瞬で。まるで超能力みたいに。
でもそれ、オレの勝手な勘違いとかじゃないと思う。
大佐は、苦しんでる。
オレと恋人であることに苦しんでる。
オレは、別れを告げられるまでそれに気がつかなかった。
好きで、大事にされて、幸せで。それにただ浸ってた。
だから、オレはあっさり身を引いた。
オレはさ、アイツが苦しんでんの嫌なわけ。
オレと一緒に居て、苦しんでるくらいなら別れたほうがいいだろう。
そう思っただけ。
離れて、大佐が楽になるならそれでいいって。
だけど、多分違う。
大佐はきっとオレを好きで居る限り多分苦しむ。
オレがあっさり身を引いたことで余計に傷ついた。
「兄さん……それで、どうするの?」
「どうもこうもねえぜ。大佐なんかほっぽっといてオレはアルの身体取り戻す。それだけ」
「でも……」
「大佐はそのうち結論出すだろ自分で。アイツは馬鹿だけどまあ覚悟決めたら揺るがねえからな」
「え?」
苦しんで、選べばいい。
オレを手放して生きていけるならそれでいい。
だけど、苦しくてもオレを選ぶというのなら。
それこそ、全身全霊でオレはアイツを愛するだろう。
「大佐がさ。本気でオレと別れて生きていくのか、それともいろんなコト乗り越えてオレを選ぶのか。まあそういう覚悟、決めるくらいの時間、アイツを一人にしておくさ」
そのくらいの覚悟、固める前に、アイツは衝動でオレに手を出した。
欲しくて欲しくてどうしようもなくて、目の前にあるものをただ掴んだ。
その衝動がオレには嬉しかったけど。
だけど、アイツは大人だから。
大人はさ、未来のこととか考えて、余計なことばっかり考えて生きる。
それで、大事なこと忘れちまうんだ。
男でも。
子どもでも。
禁忌でも。
欲しければ、覚悟を決めて手を伸ばせ。
それが無いなら未練なんか欠片も残さず諦めろ。
さあ、どうする大佐?
オレを、選ぶ?
オレを、忘れる?
その覚悟、決めるまでの時間くらいは待ってもいい。
オレは、もうとっくに。
アンタの手を取ると決めた時に決断したんだから。

オレは、一生、大佐のことが好きだ。

だから、別れても後悔しない。アンタが幸せならそれでいい。
オレの手を取っても取らなくても。

なんて嘘。ちょっとだけ強がりだ。
選べよ、大佐。
苦しんでも傷ついても、大人の対面なんてかなぐり捨てて。全身全霊で、オレを選べよ。
Posted 12:09
▼2012/4/27(金):建築基準法とミニスカート幾何学による35センチ安全論

太ももフェチの大佐のために、今日も今日とてオレ様はミニスカートなんかを穿いてみる。
揺れるひらひらのフリルからすらっと伸びてるカモシカのようなオレ様の白い腿。膝の上まである黒の二―ソックスに挟まれた領域がたまらないだろうりゃどうだ大佐!悩殺されろっ!

なのに、大佐は渋い顔になる。

「……鋼の」
「んー?どうだ大佐、そそるだろ?」
「私一人がそそられている分には問題ない。が、君、私の執務室に来る前からそんな服を着用していたんだろう。それはゆゆしき問題だ」
「へ?なんで?女装が問題なのかよ?」
大佐を誘惑するくらいならスカートくらい穿いてみせるんだが……やっぱ、男のオレ様がスカートってのはマズイんか?
きょとんと首を傾げてみれば、大佐は恐ろしく低い声でこう言った。
「そんなに短いスカートでは下着が見えてしまうだろうっ!特に階段だっ!私の執務室に来るまどれだけの階段を上らねばならんと思うのかねっ!鋼の、君、階段を上る時はきちんと後方確認はしたのかっ!万が一君の……君の下着でも目にしたものが居たら私はそいつを焼き尽くしてくれるぞっ!」
下着……、ねえ。男物のトランクスが見えたところで何が問題あるって言うんだろうなあとかも思うけど。
「まーだいじょーぶ。後ろなんかは確認してねえけど、オレ様のパンツは大佐にしか見せねえって決めてるから」
うん、ついでにそろそろパンツの中身も見てくんねえかなーとか思っているんだけど。
その為にこんな格好してきてんだけど。
そそる太もも。
いいだろ大佐。
「君のその決意は尊いものだが、そんな美しい太ももを晒しては不埒なケダモノが君に襲いかからんとも限らない。スカートなど穿かんでいい。君は少し自衛の意識を持った方がいい。頼むから穿くな」
んー……そう禁止されるとなあ、ちょっとばかし面白くない。せっかく大佐を悩殺って思ってわざわざミニスカ穿いたのに。説教モードに入られては意味がない。
とりあえず、パンツなんか見えないってことを証明すっか。
「オレ様のこのスカートの長さは35センチ。よってパンツが見えるはずはない」
きっぱりと断言する。
「35cmなんて短いスカートで階段でも上ってみろ。見えるだろうがっ!」
「見えないぜ?」
「見えるっ!」
しっかたねえなあ、理詰めで説得するか。
「アメストリスの建築基準法に基づいて話せば階段の一段の高さは8センチ以下で幅は26センチ以上。そんでもって階段の高さが3メートル以上であれば3メートル以内ごとに1.2メートル以上の長さの踊り場を設けなければならないという決まりがある。知ってっか大佐」
「いや……知らんが」
「あるんだよ。そんでもってこの東方司令部が建築基準法の規定を破るわけねえだろ?」
「まあ、そうだが……」
「ってするとだ。公共の場所における最も急な階段は35度になるんだよ。計算すりゃわかるけど、それは端折って必要なことだけ言うとだな。そんな急階段上ってみても、35センチ以上の丈のスカートはいてれば、まずパンツは見えない。ちゃんと幾何学的に証明されてんだよ」
「そ……うなのか?」
「おう。詳しく知りてぇっつーんなら『ミニスカートの幾何学』って本読んでみろよ。他にも色々図で示されてるぜ。例えば32センチより長いスカートで、角度25度程度の比較的急な階段上ったとしても、スカートの内側をのぞき見ることは出来ないとかな」
「そ、そうか……」
結構リクツ詰めにすると大佐は弱い。感情に任せて迫っても無理。
これが今までのオレ様が学んだこと。
あ、あと余計なことは言わねえことも肝心だ。
まあ、見えねえってのは嘘じゃない。
ただし「風が吹いたりすることはなければ」って前提条件付きだけどな。
個人的には階段駆け上がるとかすれば、スカートの裾なんかひらひらひらーって捲り上がっちまう気がするんだけどな。まあその辺は黙秘する。
だって、オレはどうしても大佐を誘惑したい。
ほんと、鉄壁の要塞だぜ大佐は。


――私は君を愛してはいるが、君と肉体関係を結ぶのは君が二十歳になってからだっ!


ホーンと頭固い。そりゃあさあ、出会って恋に堕ちた当時のオレ達が即座にベッドへGO!だったら淫行罪だろうけど。

オレだってもうコドモじゃない。
れっきとした16歳。しかも学生とかじゃねえんだぜ?国家錬金術師様だ。つまりは高給取り。自立した社会人……っていってもいーじゃねえか。
なのに、後4年も待てるかよ。
今すぐ襲え。
即座に食え。
そう言い続けてんのに大佐はオレのコト食ってなんてくれねーの。
仕方なしにミニスカ攻撃だのなんだの繰り広げてるってーワケ。

なのにこれだ。

ああああオレ様の春は遠い。


とりあえず、椅子にふんぞり返ってる大佐の上に乗る。

ミニスカのオレ様のふと腿くらい大佐の股間に当ててやる。

さあ、触れ!そして押し倒せっ!




書き逃げです。
Posted 11:22
▼2012/4/18(水):せくはらいやがらせたいさ・書き逃げ
「今度は何をやらかしたのか簡潔に説明してくれたまえよ鋼の」
ロイの声は疲れていた。ため息など吐いても吐いても次から次へと無尽蔵に湧きでてくる。脱力して寄りかかった椅子がぎしりと低い悲鳴を上げる。
「えーと、まあたいしたこっちゃねーよ」
エドワードのほうも口調はいつも通りだが、視線は明後日の方向を向いている。
「たいした……ね」
大したことはない。どの面下げてそんな厚顔無恥な単語を口にするのかね?とでも言おうと思ったがもはやその気力も無い。
「……いつものコト、だろ?」
「まあ……、そうだな。『いつものこと』と言い切れるくらいにはこのところ頻発しているな」
怒鳴る気力も無く淡々とロイは続けた。
「いっそ皆勤賞おめでとうと表彰でもするかね?毎日毎日毎日毎日まあよく飽きもせず破壊活動に勤しめるものだと怒りを通り越していっそ感心するとも……」
「う……。テロリスト捕まえてやってんじゃん。過激派の連中も一網打尽にしたし、イーストシティ中を騒がしてた連続殺人犯も逮捕したし。毒薬川に流そーとしてヤツとか人身売買とかやろうとしていたヤツとか要人暗殺企んでるヤツとかさ駅に仕掛けられた爆発物も処理したし幼児誘拐だって……」
「テロリスト捕まえる程度で風光明美な湖が干上がり地元住民の皆さんから抗議が入り君とアルフォンスに錬金術を持って土地を元通りにしてもらうまでにどれだけ苦労があったことか忘れてたとは言わせんぞっ!過激派一網打尽にしたのはいいが皆一様に恐怖の表情を浮かべたまま震えて取り調べは進まんっ!連続殺人犯だろうと何だろうと捕まえたのは賞賛ものだが何故美術館だの駅舎だの公用施設だのを破壊せねばならんのだっ!再建にどれだけの費用がかかっていると思っているのかね。隣国から友好のあかしとして贈られたとある名画などはな、錬金術で修復したところでそれが本物と言い切れるのか複製品とするべきなのかと頭を抱えている学芸員は何十人もいるのだぞ。要人など勝手に暗殺させておけとは言わんがその保護対象の要人がトラウマ抱えて入院してしまったのも君らの大活躍のおかげといえるなあ鋼のいちいち論うのももはや面倒だがいいかねこれだけは言っておくっ!問題は解決すればいいというものではないっ!君らが引き起こした二次災害によって我々軍部は不眠不休で働いているのだっ!処理しても処理しても次から次へと毎日毎日毎日毎日新しい騒動を起こすとはどういう了見だっ!凶悪犯を捕まえるためにアメストリス全土を焦土と化す気かねっ!あのホークアイ中尉ですら書類の処理だの現場への指示だので心身ともに消耗して倒れる寸前だ少しは反省したらどうなのかね!!」
怒鳴っているうちに怒りのエネルギーが更に上昇したのか、疲れ切ったロイの口調は次第に熱を帯び、最後には窓ガラスがびりびりと振動するほどの怒鳴り声になった。
「う……、悪かったって……」
さすがのエドワードも身を縮めて小さくなった。
「……君が引き起こした全ての事件の始末書を書き終わるまではこの私の執務室から一歩も外に出るな。書き上がっても全ての現場での処理が終わるまで謹慎処分だいいな」
「えーっ!謹慎っていつまでだよっ!」
「君が引き起こした騒動の処理が終わるまで、だ。一か月掛かるか二ヶ月掛かるかなどそんなものは知らんっ!君が自分で行った破壊活動の処理完遂まで、といえば自分でどのくらいの時間がかかるかわかるだろうっ!!」
「ちょ、冗談じゃねえってっ!オレにはやることあるんだよっ!アンタもわかってんだろっ!のんびり軍部なんかに居られねえってのっ!」
ひくり、とロイの口元が歪む。
「……のんびり、ゆっくりいつまでも軍部に居るがいい。自分でもわかっているのだろう?君が引き起こした騒動の処理にどのくらいかかるかなどは。自分が起こしたことは自分で責任を取りたまえ!国家錬金術師の資格をはく奪されないだけでもありがたいと思いたまえっ!」
「そりゃやりすぎたって思うけどさそれは反省してっけどさっ!全部が全部オレのせいってのは酷くねえ?テロリストのみなさんと犯人のみなさんの責任をさっぴいてだ、ここはひとつ謹慎とかじゃなくてもう少し軽い処分にしてくんねえかなああもちろん始末書は可及的速やかに書きあげるから」
な、な、頼むよ大佐、と頭を下げているのはさすがにエドワードも己の所業を反省しているからだろうか。
ロイは苦々しく思ったが、どの道大人しく二ヶ月も三ヶ月も謹慎しているエドワードではないということは嫌でもわかっていた。
「ほ、ほら。破壊しちまった建物とか町とか村とか駅舎とかはオレが錬金術でちゃちゃいのちゃいで直すし」
「……当然だ」
「迷惑かけちまったみなさんにはちゃんと謝りに行くし」
「謝罪などもうとっくにこの私が直々にしている。仮にも私は君の上司で後見人だ。君の起こした騒動の責任は私に降りかかってくる。何件、何十件、いや何百件謝りに行ったと思うのかね?二日や三日では謝罪の旅は終わらなかったぞ?」
「そそそそそそそいつはすまねえなっ!でもオレも謝りに行くし。それに犯人なんかにはさトラウマになるくらいなほうが再犯起こさなくていーんじゃねえかと……」
「……鋼の、君、反省が足らんようだな。調書も取れなくて現場は非常に迷惑を被っているというのに」
「すすすすすすすすすみませ……」
ロイは何百回めかのため息をついた。
「ま、だが、君も反省しているようだし、な」
「うん、うんうんうんうんうんハンセーしてまっす大佐殿っ!」
「ならば、ちょっとしたペナルティを受けてもらえれば、軽い謹慎処分で済ませてやろう」
「おう!何でもしますとも大佐殿っ!」
「そうか、男に二言はないな、鋼の」
「もちろんっ!だから一刻も早く旅に戻してくれよ」
「ああわかった。では……」
実に簡単なペナルティだ。
私は軍服の上着を脱いで、それを机の上に放り投げる。ついでに、シャツのボタンを一つ二つ……とゆっくりと外していった。
「な、何してんの大佐……」
「うん?いやなに、君に対するペナルティの準備だとも」
「準備……?」
「そう、こっちにおいで鋼の」
手招きをして、とことこと近寄ってきた鋼のを抱き上げ私の膝の上に載せた。
「な、なにこれ。セクハラ?」
「まあ、近いかな?君に対する軽い嫌がらせだ。さあ、私の首筋にでもキスマークの一つくらいつけてもらおうか。実に簡単なペナルティだろう?それで免除してやる」
「え、ええええええええええーっ!」
「耳元で怒鳴るな鋼の。何も唇にキスしろと言っているわけではなく、この私の首で勘弁してやろうっていうのだ、さっさとしたまえよ」
Posted 08:37
▼2012/3/31(土):記憶喪失〜書き逃げ
鏡を、じっと見つめてみる。
「夏目、それではナルシストにしか見えんぞ」
とか言ってくるにゃんこ先生の言葉も聞き流してとにかくひたすら鏡に映っている自分を見る。
……高校生、だったはずだ。
藤原の家に引き取られて、落ち着いて学校に通いだして、友達もできて……、名取さんとかとも知り合いになって……。妖関係は、まあ、友人帳の名前を返すとか、そのほかいろんなことがあったけれど。
とにかくおれの記憶ではおれはまだ高校1年生だったのだ。
だけど、鏡の中の自分の姿はどう見ても二十代後半。
「なんで……」
ぼそと、呟けば「仕方あるまい頭を打って軽い記憶喪失だということだ。どんくさいやつだな夏目は」
などとにゃんこ先生があくびをする。
軽い、記憶喪失。
十二〜三年分くらいの記憶が飛んだらしい。
「まあそのうち戻るだろうからな」
戻る、のだろうか?おれには自分が二十歳後半であることの自覚なんて全くないというのに。
「思い……だすとかいうよりも、この鏡の中の自分がおかしいとか思うんだけど」
こんな顔、自分じゃないみたいだ。
まあ、成長したってことでいいのかもしれないけど。
記憶喪失。
実感はない。
それだけじゃなくて……。
それ、だけじゃなくて困ったことに……。
「ぱぱ?」
小さくて、ふわふわして、あったかいのが、おれの膝の上に「よいしょ」とばかりに乗ってくる。
「あのね、ご本、よんでほしーの」
にこっと天使のような笑みを浮かべたのはどう見ても幼稚園児くらいの小さな女の子。
この女の子は誰だろう。
なんとなく名取さんに似ているカンジがするんだけど。目もととか唇とか。
……名取さんの、子ども、なのだろうか?
それはそれでなんかムカついた気がした。
ムカつく?どうしてだかわからないけど。
それにこの子は今おれにむかって「パパ」とか言わなかったか?
「ちょっと待っておけ、今夏目は混乱中だからな」
「こんらんちゅう?」
「そうだ、だから、待っておけ」
んーん、と女の子は悩んで。
「こんらんてなに?」
「今大変だということだ」
「ぱぱ、大変なの?」
「そうだ。だから待ってやれ」
「じゃあ、しゅーいちぱぱは?」
「名取はまだ仕事中だろう。後1時間くらいしたら帰ってくるからそれから読んでもらえ」
「じゃあ、しゅーいちパパがかえってくるまでにゃんこセンセイわたしと遊んで?」
「よかろう」
……しゅーいちパパ?名取さんの事か?ってことはやっぱりこの子は名取さんの子か?
分からない。
「ではあっちで遊んでやろう。まずはその本を仕舞って来い」
「うんっ!」
元気に駆けだす女の子をしり目におれは、すっきりとしない気分を味わっていた。
そんなおれのほうを先生はちらと見た。
「記憶が無いからおぼえていないだろうが、あれはお前が産んだお前と名取の子だからな。記憶喪失だとはいえあれを泣かせるなよ」
「は?」
だれが、何を、産んだって……?

Posted 00:56
▼2012/3/23(金):予想外。。。
「……て、欲しいものがあるんです」
夏目にしては珍しくねだるようなことを言いだした。
「うん、何が欲しいんだい?」
欲しいというのならなんでもあげたくなってしまう程に夏目は可愛い。
「えっ!お、おれ、口に出して言ってました、か……?」
おや?どうやら夏目は私に言ったのではなくて、そもそも口に出してのセリフではなくて欲しいものがあると心の中で呟いただけだったのか。
「ああ、欲しいものがあるって言ったよね今」
うわああああ、と夏目は頭を抱えてしゃがみこんでしまった。
「は、はずかし……」
「別に恥ずかしがらなくても。夏目のお願いだったらなんでも叶えるよ私は」
しゃがみこんだまま、目線だけを私の方へちらと向けてくる。
「……えっと、いいんですか?」
「もちろんだよ夏目。欲しいものがあるのならなんでも言ってごらん?」
「何が欲しいとか、おれ、まだ言ってもいないんですけど……」
普段、何かをねだることなど全くと言っていいほどない可愛い夏目のおねだりなのだ。たとえ蓬莱の玉の枝だろうが火鼠の裘だろうが、その欲しいものを手に入れることができるまで世界中どこまででも探しに行って取って来て見せようと、まあ、その程度の気合いくらいは入っているのだ。
「ああ、何でも。夏目が欲しいというのだからね。私は全力でそれを探しに行ってくるとも」
「あー……、ええと……」
「何が欲しいんだい夏目?」
ええと、と言いながら夏目は明後日の方向を向いてしまった。
「ええと、ですね……」
「うん?何かな?」
あーとかええと、とか口ごもった後、少々頬を染めてぼそりと呟いたその言葉は、
「おれの口から言うのはずかしいので……、おれがほしいもの、とかは、その……名取さんが当ててみてください……」
であった。
ええと、だ。夏目?
君の欲しいものなら何でも手に入れてみせるがその……。何が欲しいのかわからないのでは探しようもない気がするんだが……。
だが、頬を染めた夏目は可愛い。
ではなくて。
いや、夏目は可愛いのだが。
欲しいものを当てるのは至難の業ではないのだろうか?
それともそれを当てるのが愛の試練なのだろうか?
さすがの私も戸惑った。
戸惑ったが、夏目が欲しいというのなら何でも手に入れてみせると言ったのは確かにこの私自信であるからして。
だが、何を手に入れてみせたらいいのだろうか……?
うーん……。
とりあえず、前々から上着のポケットに忍び込ませている私の給料三カ月分の指輪などをこれを機会に夏目に渡してみたらいいのだろうか?
悩む。
少々悩んでしまう。
指輪じゃありません、などと夏目に言われたらさすがの私も少々ショックを受けてしまうので悩む。
とりあえず、時間稼ぎ的に夏目に手を差し出して、そうして夏目を立ち上がらせる。
しゃがみこんだままではあんまりだと思っただけなのだが。
そうして掴んだ手を離すのももったいなくて、そのままゆっくり歩き出しながら夏目の欲しいものを考える。
夏目は何も言わずにと私についてくる。
繋いだ手が暖かくて、このままでもいいなあと一瞬思ったのだが、歩きながら夏目の欲しいものを考えねばならない。
そう思っていたのに。
「あ、ありがとうございます……」と小さな声が聞こえてきた。
「え?」
「手を、つないで欲しくて、おれ……」
思わず足を止めて夏目を見ればこれ以上もないほどに顔が赤くなっていて。
欲しいもの。
夏目が私にして欲しいもの……は、これだったのか。




腹黒夏目を書くつもりがなんか可愛いまま終わりそうになったのでこのへんでボツ。予想外いいいいい。くすん。
Posted 18:20
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