「うぅー寒い・・・」
コートも着ているし、マフラーに手袋もしているのに、凍えるほど寒い。

それは昨夜雪が降ったせいで
今も積もっているから余計に風が冷たい。
歩く度にじゃりじゃりいう音も、寒さを増幅させるには充分だった。

ベルは黒いマフラーを口元まで巻いて
手は両方ともコートのポケットの中に入っていた。

「・・・ベル、そのコートの中ってボーダーのシャツだよね?」
「身軽にしとかないといけないからね。」
「でも流石に寒そうだよ。ね、俺の手袋、良かったら使わない?」
いそいそと手袋を外し始めた綱吉の手を
ベルは手首を掴んで制した。

「綱吉だってそんなに着込んでるのに震えてんじゃん。俺は大丈夫だよ。王子だからね。」
「ダメ!このままじゃベル風邪ひいちゃうよ。」

いつも家にいる小さい子供の世話をしているせいか、
綱吉はこういうことは断固として譲らない。

ベルはその時何かを思い付いたのか
ニッと笑みを浮かべると
じゃぁ、と言って、自分の方にある綱吉の左手だけから手袋を取り
それを自分の左手にはめた。

「あったけー。」
右手こっちは?」
「そっちは綱吉が着けてて。」

そう言うと、ベルは手袋をしていない右手で
綱吉の冷たい左手をきゅっと握った。

そしてそのまま自分のコートのポケットへ突っ込む。

「あったかい・・・」
「こうすればどっちも寒い思いしなくて済むじゃん?王子天才。」
「あはは。でもちょっと恥ずかしいなぁ。」
はにかみ笑いを浮かべて言いながらも
綱吉はそっと、ポケットの中の手を握り返した。


氷のように冷たくなってかじかんでいた指先が
じわじわと体温で溶かされていく。

                                          *指先に愛情を*



ぎりぎり季節外れじゃないお話(笑)
これも結構前から携帯に保存されていたものです。
えぇと2人は、後ろから見てベルが左、綱吉が右で仲良く並んで歩いてます(ここで説明しなきゃ分からないっておま;)
ベルもし冬も標準の格好だったら絶対寒い!って思ったらいつの間にか出来ていたこのお題小説。
相変わらずお題微妙な捉え方してるな自分。
2008.3.10 純白華