▼1月−2
「入るね。」その一言と共に扉が開いた。
心臓がバクバクいってるのが自分でもわかる。どうかハルに聞こえませんよーに!
「よっ、ユタカ。」
「えっ、姉貴!?」
部屋に入ってきたのは俺の姉貴、優希(ユウキ)。
姉貴の後ろにハルが居た。よっしゃ!心の中でガッツポーズ。
「何さ。あたしがいたら悪い訳?あっ、もしかしてお邪魔だとか?」
Sの眼だ。いやらしく輝いてる。
姉貴の手中に収まるのが悔しいからとりあえず否定する。
「別にそんなんじゃねーよ。ほら、姉貴が俺の部屋に来るなんて珍しいから。」
「ふーん。ま、そういう事にしといてあげるわ。この優しい綺麗で完璧なお姉さまがね!」
あえて俺は突っ込まない。理由はこんなのが日常茶飯事だから。
「さ、そろそろ行くよ。でないと込むからねぇ」
そう言いながら姉貴は下の階に下りていった。
「ユっくん、私たちも行こうよ。込むとはぐれちゃうかもしれないよ」
ぐはっ、吐血(心の中で)
あぁ、神様。俺にこんな素敵な天使を身近に置いてくださった事を感謝します。
俺に向けられたハルの笑顔は天使そのもの。いや、天使より綺麗かもしれない。
この笑顔が守れるなら俺は何だってしよう。
でも少し不満がある。
なんでまた“ユっくん”なの?
それにはぐれるって…もう子供じゃないのに。
でも言い返せない俺。こういうのをヘタレって呼ぶのかな…
こんな事をハルの後ろで悶々と考えながら俺は下に下りていった。