Traveler who tells a lie
小さな国の お姫様背もたれの大きな 赤い 金属のついた椅子に座れば
たちまち人々が やってきて
お姫様に跪く
椅子から立てば
たちまち人々は 頭を下げ
「お姫様」ってよんでくれるんだよ
「・・・・・・・・ふう」
私はため息をついた。
「どうだった?りんごちゃん」
この同級生で、同じ部活を、そして家が近所でもあるささきまぐろくんという人の言うとおり、私の名前はりんご。あんどうりんごという。物理部(という名の何でも部)に所属しており、唯一自慢できるのが視力が5.0ということ。
・・・・・・・・と、そうじゃなくて。
放課後の部活動の時間、つまり今、この同級生にずっと変な話を聞かされた。
どれも変な話で、正直呆れていた。
「そんな御伽噺、子供だましだよ。
大体話がシュールすぎでしょ。特に最後の!何それ!!」
「お姫様のお話だよ」
「誰よそんなの考えたの・・・・・・」
「ぼくだよ★」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
少し外見とのギャップに吹きそうになったが、場に合わぬその笑いをこらえた。
「へ、へーぇ・・・・・・」
「ロマンチック?ロマンチック〜★??」
どこがロマンチックだ。
ただのドSお姫様の話だろうが。
まさかお前しばかれたいのか。そのドSお姫様にしばかれたいのか。
・・・心の中の必死のツッコミ。
少し推測してみると。彼のMっ気を考えると、もしかしてそういうつもりで・・・・と思ったが考えるのをやめた。少し気持ち悪くなったからである。
と、ここで。
キーンコーンカーンコーン・・・・
「あ、チャイムが鳴ったね★」
何事もなかったかのようにひょっと切り替えるまぐろくんを見て、
そこがささきまぐろくんのすごいとこなのかな、と私は思った。
「よし、私もきりがいいとこだ。じゃあ今日はこれで終わりにしよう」
と、突然今まで黙り込み話に入ってこなかったりすと熊の融合体、りすくませんぱいが声を上げた。
きりがいい、とは実験のことである。
そして彼の愛はそんな実験失敗による爆発。爆発即ち真実の愛との事。
「はーい!」
ささきまぐろくんが素直そうに声を上げ、床に放っぽっていた鞄をよいしょと持ち上げた。
その姿を見た私もふと我に返り、その隣においていた鞄を急いで持ち上げる。
私とまぐろくんの帰り道は一緒であり、親からも一緒に帰りなさい、と言われている。私的にはそんなのどうでもいい、過保護だ。と思うが、私のことが心配らしいのでいつも一緒に帰ろ、とまぐろくんを誘っている。
まぐろくんは気まぐれだから、誘わないと一緒に帰ってくれないのだ。
「じゃあせんぱい、ばいばーい!!」
「うむ、気をつけて帰りなさい」
せんぱいの少し心配そうなひねくれ声がドアを閉めても廊下に響いていた。
「ねぇりんごちゃん」
「なに」
今さっきの話のこともあり、今は少し彼に呆れているので少し冷たそうな声で返事をした。
冷たいな、と自分でも意識していた。これは単なる彼へのいじわるだ。
「そういう言い方しないでよう★
今さっきの話の続きがあるんだ、聞いてくれる??」
せっかくいじわるに釣れた、と思ったが語尾の★はいただけないな。
心の中で小さく ち、と舌打ちする。
「・・・今さっきの話の続きぃ?
・・・・・・・・・・・すこし、きになる け ど・・・・・」
「やっぱり★」
りんごちゃんなら言ってくれると思ったよ、と無邪気そうに口を開き話し出す彼は、正直言ってちょっと子供っぽく可愛らしいと思った。
「んでー・・・その・・・はやくその話の続き聞かせてくれない?」
「うん いーよッ★」
ほんとはかなり期待感を持った自分がいた。素直じゃないな。
「そのお姫様はね・・・・」
静かに、ささきまぐろくんが語り始めた。