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時は近未来。
文明はたいして発展せずに人は地球上の資源を使い果たした。
残ったのは汚染された空気、飲めない水、使い道の無いお金。
そして、テレビではメガネをかけて白衣を着たいかにも偉そうな博士が言った。
「人類はあと三年で死滅する。」
それと同時に人は希望を失った。
始まった世界は混沌渦巻く本質の世界だった。
自分が生き残る為に奪う者。
自暴自棄になり本能のままに生きる者。
慰めあい滅びの時まで共に生きる者。
希望を求め僅かな可能性を追う者。
希望を無くし自らの命を絶つ者。

この物語はそんな世界で生きる一人の少女の物語。

舗装する必要も無くなった道なき道を歩く一人の少女。
髪は黒くて長く肌は白い目は丸く緑がかった黒をしている。
服は白いワンピースを着ている。
彼女は一年前に「人類はあと三年で死滅する。」と言う発言を聞いて旅に出た。
親は彼女を引き止めたが彼女には見たいものがあった。
それは、追い詰められた人間がどんな生き方をしているのか。
それを自分自身の目で見たかった。
そのために彼女は多くの町を歩き多くの人間を見てきた。
そしてその人達の生き方を見てきた。
彼女はそれらを自身の持つメモに記録した。
何故、その様な事をしたくなったのかは解らない。
ただ、死ぬまでに色々な人間を見て記録して人類が完全に滅びた後
次に地上を支配する生き物にその記録を見て欲しい。
この世界にたしかに人類と言うモノがいた事の証明をしたい。
そして、その人類の滅び逝く姿を伝えたい。
あと、二年で人類は死滅する。
その時まで彼女は記録する。
滅び逝く人類を・・・・
前行った町ではお互いがお互いを殺し。
男は殺した女を犯し、女は殺した男を食べていた。
一昔前の人々が見たら地獄絵図とでも言うであろう惨状だった。
次の町はどんな町だろうと色々と想像し彼女は歩く。
想像する町に明るい町などない。
全てが暗い街。
それが、ましかそうではないかの違いだけだ。
だけれど、僅かな違いを期待して彼女は歩く。
次の街が見えてきた。
彼女はメモの新しいページを開いた。

淀んだ空は灰色。

汚染された大地は黒い。

彼女のメモは白い。

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