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その町は明るかった。
しかし、明るいと言っても他の町より少し機能していると言うだけのことだ。
モノを売っていてそれを物々交換で手に入れる人々。
金が意味を成さないこの世界では全てが物々交換になっていた。
ただ、物々交換を出来ているだけでもこの町は凄い。
普通は、盗むか殺して奪うかのどちらかだ。
この様な町も他に無い事は無いが非常に珍しい町であることは事実だ。
彼女は自身の興味を引く人物を探す。
町の人々を全て書き記すのは不可能だ。
だから、彼女は毎回その町で自分の興味を持った相手だけをメモに記す。
見つからぬ場合はその町の様子だけをメモして次の町へ行く。
しばらく探しても彼女の興味を引く人物はいない。
ここでの記録は止めて次の町へ行こう。
彼女はそう思ったが流石に結構歩いたので休憩がてら喫茶店に行く事にする。
喫茶店と言ってもギリギリ人間が飲める水しかないのだが
飲まないよりかは幾分ましである。
彼女が水を飲みながら次は何処の町に行こうかと地図を見ながら思案していると
「隣いいかい?」
彼女が見るとそこには茶髪で青い瞳で背の高い男がいた。
メガネをかけてロングコートを着ていていかにも聡明そうな男である。
「・・・・・どうぞ。」
彼女は短くそう答えて再び地図に目を向ける。
「ねぇ、君この辺では見かけないけどもしかして旅の人かい?」
彼は興味深げに聞いてくる。
「・・・ええ。」
彼女は煩わしそうに短く答える。
彼はそんな彼女を気にもせず続ける。
「どうして、こんな時代に旅なんかしているんだい?」
彼女は地図をしまい彼の話に付き合う事にする。
「人を見たいからですよ。」
「人?どうして?」
「終わりに向けて多くの人を記録して未来に栄える種族に人間を知ってもらうためです。」
「・・・・・そうか。」
彼は彼女の話を真剣に聞き頷く。
「意外ですね。」
表情は一切変わっていないが彼女は驚いたように言う。
「何がだい?」
彼は本当に不思議そうな顔をして聞く。
「大概の人は私の話を聞くと笑うんですよ。馬鹿だとね。」
「皆、変わってしまったからね。」
「・・・・・そうですね。」
しばし、無言の時が流れる。
そして、勢い良く彼が言う。
「だけど、そんなのももう終わる!悪いけど君の旅もここで終わる。」
「・・・・・何故です?」
彼女は警戒しつつ彼に問う。
「人類は進化する!」
彼は声を大にして言った。
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