▼3
お互いの唇が重なる。
この世の全てが息を潜めた。
全てが静まり返りこの世には二人しかいないのかと思わせるほどの静寂。
それはまるで本当に時間が止まってしまったかの様だった。
二人はお互いの存在を確かめるかの様に熱いキスを交わした。
まず、絡められていた舌が離れ名残惜しそうに唇も離れる。
お互いの唾液が糸を引いてそれはとても危険な艶っぽさを演出する。
その間、約二分。
その時間が二人にとって長かったのか短かったのかは解らない。
ただ、お互いまっすぐに見つめ合っている。
男が言う。
「ごちそうさまでした。」
女も言う。
「ごちそうさまでした。」
しばらくの間。
女は男の膝に頭を載せて横になる。
「・・・・次は私にして下さい。」
男は頬を赤くし聞く。
「・・えっと、何を?」
「耳掃除。」
「わかったよ。」
また、静かな時間に戻る。
お互いその緩やかな時間に身を委ねる。
しばらく経った頃、男が口を開く。
「そろそろ、行こうか。」
「・・・・・」
女の返事は無い。
「ねぇ、帰るよ。」
男は女を揺らす。
返事は無い。
男が確認する。
女は息をしていなかった。
一呼吸置き女に問う。
「・・・・どうして、置いていくかな?」
男は女に軽くキスをする。
「いつになるかは解らないけど、僕もいずれ行くよ。それまで、待っていてくれる?」
「・・・・・」
女は当然、答えない。
「・・・って、ははっ。我が儘かな?それは。」
男はその場に女を寝かせる。
「・・それじゃ、僕はそろそろ行くね。」
「・・・・・」
男はその場を離れた。
女はいつまでも待っている。

(完)
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