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「・・・・え・・・・・僕が死ぬ?」
「・・・・・・と思った。」
「なんだ。びっくりさせないでくれよ。」
女は黒真珠の様に綺麗な黒い瞳を男に向けた。
その瞳には涙が浮かんでいる。
そして、語る。
「・・・そう思うとひどく悲しくなって貴方に少しでも幸せな時間を過ごさせてあげようと思った。貴方には死ぬ前に幸せになって欲しい。」
男は女の瞳を見つめながら答えた。
「・・・・・嬉しいな。そんなに想ってもらえるなんて。」
二人はしばらく見つめあう。
薄暗い部屋に静寂の刻が流れた。
男が先に口を開く。
「そうだね・・僕は明日死ぬかもしれない。・・だけど、それは君も一緒だろ?」
女は自分の事は考えていなかったかの様にきょとんとした。
そして、静かに答える。
「・・・・・そうね。」
「何かして欲しい事ある?」
女はしばらく考えたのち答える。
「キス」
「・・・え?」
「キス、接吻、チュー・・・ディープキッス。」
「いやいやいや、意味は解る。・・・ってディープ!?・・・・良いの?」
「えぇ。」
男はソワソワして女の肩に手を載せた。
「いくよ。準備は良い?」
「・・・準備?」
「うっ・・うん。っこっここ・・心の準備。」
「・・・えぇ。」
男は緊張のあまり顔が強張っている。
男のそんな様子を見て女は笑いをもらした。
「ふふっ。」
女の笑いを見て男は拗ねた様に言う。
「ちょっと、どうして笑うんだよ。」
「・・・だって。ふふっ、顔が・・もしかして、緊張してる?」
「そりゃ、緊張もするさ。・・・・・君とキスすること自体初めてだからね。」
「・・・・・・・そういえば、そうね。」
「そういえば・・って・・・まぁ、いいか。・・・目瞑って。」
「はい。」
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