▼1
私はそれなりに面白い人間だった。
私は変わった人間だった。
私が何かする度にクラスの皆は笑顔になった。
私は感性に関しても自身があった。
私が感じたモノをそのまま描けば美術の先生に褒められた。
美術の成績はいつも5。
ただ、私の個性、感性を理解出来無い人間からは、
「お前って変わってるよなぁ。」
と言われた事も何回もある。
その度に、心の中で「当たり前だ。お前なんかとは違うんだ。」と毒づいていた。
「ってか変人だよな。」
と悪口を言われた事もある。
私は「変態より変人の方がマシだ。」と冗談交じりに笑い、答えていた。
心の中は「お前の様なクズに私の感性なんて理解出来っこ無いよ。」と冷笑していた。
周り全てを馬鹿にし、自分を特別な存在にしていた。
事実、私はそんな自分の個性と感性に誇りを持っていた。

過去の自分は、将来、この個性と感性を生かした仕事に就きたいと思っていた。

今の自分はサラリーマン。
誰が見てもサラリーマン。
それは、沢山のモノを諦めてきた顔。
吐く溜息の色からも見てとれるほど明らか。
ただ、私は諦めた先にも夢を見た。
サラリーマンでも変わったサラリーマンを目指そうと、日々、人とは違う切り口で提案や意見を述べた。人とは違う。会社の中で自分を差別化し上に上りつめようと考えた。
「お前、もっと普通な事考えろ。」
「そんな事、出来ると思っているのか!?」
「変わった事とか求めて無いんだよ!!」
「もっと、周りの人間を見習え!」
「変わった事言えばカッコイイとか思っているのか?馬鹿が!」
周りが求めるのは「普通」に仕事の出来る人間だった。
それが、社会というものだった。
私の求める世界は無かった。
ある日、同じ部署に新しい上司が来た。
その上司は誰にでも明るく接し何事も早くこなす。
一般的に言う出来た上司だった。
部下からは尊敬され上司からは誉められていた。
この上司こそ私の居たかった位置だ。目指していた地位だと思った。
普通の事しかしていないにも関わらず何故その地位が手に入る?
私は疑問に感じずにはいられなかった。

そんな中、一つの事件が起きる。
それは、私にとっては事件。周りの「普通」から見たら「普通」だったのかもしれない。
スポンサード リンク