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ガタンゴトン

汽車は走る。
いつまでもどこまでも走る。
汽車はずいぶん昔から走っている。
同じレールの上を・・・
何処までも続くレール。
流れゆく景色。
様々な経験をしてきた。
雨にも打たれた。子供に石を投げられた。レールの上にパンも置かれた。人を引いた事もある。熱い夜もあった。しかし、汽車は常に走り続けた。なぜなら、レールがあるから。そのレールを走る事が汽車のすべき事だから。そう、それは汽車が生きるため。その為にレールを走り続ける。

ガタンゴトン

軍服の男が汽車の屋根に立っている。
男は車掌さんの帽子を被っている。
男は2メートルもありそうな大男。
正確には197,5センチの大男。
ゲームで出てくるルリオ?マイージ?ともかく立派な髭をこしらえている。
首には小さな笛をさげている。
男は大きく息を吸い込む。そして、大きな声で言う。

「進め進め進め!進むだけで良い。その為のレールだ。さぁ、進め!いざ行かん、我等、栄光の未来の為に!進め進め進め!進むことに意味がある。その為のレールだ。さぁ、進め!それが、我等、唯一の道なのだから!進め進め進め!」

ガタンゴトン

私はただひたすらに進む。
今まで幾つもの苦難を乗り越えてきた。
そして、沢山のモノを見た。
真っ赤に燃える山を見た。流れていく雲を見た。涙ぐんだ空を見た。故障した老人を見た。老人を捨てている子供を見た。笑顔で逃げていくツチノコを見た。お巡りさんに挨拶をする泥棒を見た。痴漢をしているお巡りさんを見た。痴漢をされているオカマを見た。オカマを助けたターミネータァを見た。戦争を見た。世界平和条約を見た。バブルを見た。オイルショックを見た。冷戦を見た。リストラを見た。就職難を見た。マザーテレサを見た。
どれだけ見ても私は止まらない。
ずっと変わらぬ同じ幅のレールを進む。
それが、正しい道だと信じて。
その先にある未来を信じて。

ガタンゴトン

そんなある日、私とは違うレールで少し先を走っていた。
汽車が脱線した。
大きな音。崩れゆく車両。砂埃。悲鳴。
彼は何故か満足そうな顔をしていた。
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