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ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン!!!!
ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン!!!!!
ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴチャ!!!

音が乱れた。
脱線。
周りの木々を薙倒し進む。
汽車は進む。
汽車は進んだ。
約30メートル。
正確には31,84メートル。
そこで、倒れた。

進め進め進め!海まで進め!観たい景色がある。進め進め進め!山を越えろ!その先に希望がある。進めすす・・・め・・す・・・。

それを遠くの方のレールで見ている汽車が一両。

最近、脱線が多い。
それが、車掌のミスか汽車の意思かは解らない。
だが、後者であるならただの馬鹿だ。
僕達はレールを外れたら終わり。
要は死ぬって事。
レールが無いなんて考えられない。
僕は常にこのレールを走る事こそが全てであると考える。
これ以外の道なんてない。
僕が観てきた以上の景色なんて無い。
それを求めるのはただの無い物ねだり。
夢を見るな!
今、目の前に広がっている景色こそが自分の現実。
それ以上は求めちゃいけない。
それ以上は求めない。
今で満足。
これ以上は無い。

ガタンゴトン

進め進め進め!今だけを見ろ。その為のレールだ。さぁ、進め!求め過ぎるな。そうすれば災厄は無い!進め進め進め!絶対安心安定だ。その為のレールだ。さぁ、進め!この道で間違いは無い!進め進め進め!

ガタンゴトン

脱線した奴らの中には自ら脱線したモノもいた。
僕はそういう奴の考え方を知れた珍しい汽車だと言えるだろう。
そいつは、「ただ、レールを走るだけじゃ嫌だ。何があるか解らない道を走りたい。どこに何があるか解らないから楽しいじゃないか!」と熱弁してくれた。
僕は思う。
レールの上を走っているだけでも何があるか解らない。
大体の予想はつくけれど、いざ1キロも先には何があるか解らない。
だから、どちらにしても一緒。
ただ、安全か否かの違い。
それならば安全なレールの上を走っている方がまだ良い。
それも大概のレールはどこまでもどこまでも伸びているからだ。
ならば、レールの上にいる限り僕の将来は安泰。
それが、僕の考え方。

ガタンゴトン

進め進め進め!安全な道を安心して。その為のレールだ。さぁ、進め!楽しくなくてもいつか楽しい事もあるさ!進め進め進め!怖くない。その為のレールだ。さぁ、進め!怖かったらそれは嘘だ。なぜなら、これが僕のレールだからだ!進めすす・・め・・。

キィィィイイイ!

汽車は止まった。
レールが無い。
そこは、終点。
進むべき道が無い。
進みたくても進めない。
どうすればいい?
どうしようも無い。
終わり。
こんなところで終わり?
まだ、30年ばかししか走っていないのに・・・

何故?

さっき、脱線した奴のレールはまだ先に続いているのに・・・

・・・・・・・・・

進め進め進め!

進め進め!!

進め!!!

(完)
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