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人類は益々栄え、ついには生活の域を他の星にまで広げていました。
月は勿論の事、時空ワープをして何万光年離れた星にも一瞬にして行き、そこに住む人々も出てきました。
正確な人類の数は、もう、把握しきれない位に膨れ上がり何兆人もの規模で様々な銀河系に存在しているのでした。
そこに、争いは無く皆平和に暮らしていました。
ただ、人類が生きていく為に殺して来た自然達は無く。不自然すらも存在出来なくなっていました。
そんなモノが無くても人々は栄養を摂取出来るモノを作り出し。
体験装置により自然に触れ、自然の匂いを嗅ぐ事が出来るので、特に生の自然が必要という事はありませんでした。
様々なモノを殺して人々が行きついたのは貧富の差も無く、争いも無くとても平和な夢の様な生活。
ただ、そこに緑は無く。人間以外の生物もいなかったのです。
だけど、人間達にとってはまさに理想の世界。
これ以上、発展のしようが無いくらいに発展しきりました。

病院に連れてきてもらった宇宙は早速、精密検査を受けました。
結果を見た医者は驚いた様に目を見開いて、そして少し間を開けて落ち着いた口調で言った。
「N3Pウイルスが大量に繁殖して細胞を次々に破壊していっています。」
宇宙は聞いた事も無いウイルス名だったので良く解りません。
「先生、それは、一体どういうものなのですか?」
「詳しい事はまだ解っていません。発症する人によって症状も変わるので非常に危険なウイルスです。それに、あと数日放っていたら貴方、死んでいますよ。」
「そんな……先生!治るんですか?このまま、死ぬなんて嫌ですよ。」
「放っておいたらって言ったでしょう。幸い、この症状は過去にも何件かあるので薬が開発されています。これを飲んだら治ります。」
そう言って渡された薬を宇宙は早速飲みました。

更に何千年と経ったある日。
人々はついには宇宙の果てを発見しました。
そこは黒い壁だったのです。
壁が在るという事は何処かに宇宙の出口が在る筈だと人々は考えました。
人々はついに、宇宙というモノの形を捉えたのです。
宇宙に出口があればその先には何が在るのだろう?
人間の飽くなき探究心。
それが、ここまで栄えてきた所以だったのでしょう。
人々は宇宙の出口を探す事に躍起になりました。
そんな、ある日。
宇宙に雨が降りました。
幾つもの水滴が宇宙に沸いたのです。
それは、今まで人間が築き上げてきた様々なモノを溶かし、更に人をも溶かしました。
人類は恐怖しました。
当たり前です。
いきなり、意味の解らないモノに今まで築いてきたモノ全てが飲まれていくのですから。
人々は地下に逃げました。
だけど、無駄でした。
液体なのでありとあらゆる場所に浸食していきました。
宇宙がその液体に埋め尽くされました。
人は骨も残らず宇宙の何処からも消えてしまいました。
人の作りしモノも全て無くなりました。
それから、数千年経ちました。
謎の液体は宇宙から消え。
地球は緑に溢れ。
他の星々は本来の姿に戻りました。

今日も宇宙は元気です。

(完)
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