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彼は目覚める。
右隣には少女。
彼は辺りを見渡す。
そこは正方形の部屋。
左手には20センチ四方の小さな窓。
正面には頑丈そうな鉄の扉。
彼は落ち着いたように一息吐く。
そして、一言呟いた。

「・・・・また、ここだ。」

彼は立ち上がり扉の前にいき扉を開けようとする。
ガンッ!
外から鍵がかけられているのか扉は開かない。

「やっぱり・・・」

彼はさっきまで座っていた場所に座る。
そして、少女に向かって語りかける。

「ここはどこなんだろうね?」
「・・・・・」

しかし、少女は答えない。
ただ、壁にもたれ彼の隣に座っている。
長い髪が垂れて彼女の顔は見えない。
彼は少女の髪をポケットの中から取り出したゴムで結う。

「・・・綺麗だね。どうしてそんなに綺麗なのにいつも髪で顔を隠すの?」
「・・・・・」

少女は答えない。
彼は構わず話す。
「今日は面白い話をしてあげるね。昔、僕がまだ小さかった頃の話。」
「・・・・・」

少女の結われた髪が風でゆれる。
ゆれた髪が彼の鼻にかかる。
彼はくしゃみをした。
少女の顔に彼の唾がかかった。

「あっ、ごめん。今拭くからね。」
「・・・・・」

彼は自分の服の袖で彼女の顔を拭いた。
少女は動かない。

「あれっ?・・・・・僕、何を話そうとしていたんだっけ?」
「・・・・・」
「そうだっ!怖い話をしようとしていたんだったね。」
「・・・・・」
「昔、僕は天の川を泳ぐ蛙を見た。流れる星の間を上手に泳いでいたんだ。」
「・・・・・」
「これだけで怖いだろう。だけど、僕はもっと怖かった。」
「・・・・・」
「なにせその蛙は僕の方を見て笑ったんだ。ゲラゲラと・・・・」
「・・・・・」
「何故、笑われているのかとかそんな事は気にならなかった。」
「・・・・・」
「ただ、僕は怖くて震えていた。」
「・・・・・」
「すると、その蛙の周りの星が割れて中からおたまじゃくしが出てきたんだ。」
「・・・・・」
「全員が僕を見て二タッと笑った。そして、凄い勢いで泳いで消えた。」
「・・・・・」

彼は一言ずつ区切り少女の反応を見たが少女は何の反応も示さない。
そんな、少女の様子を気にする事無く彼は聞く。

「どう?怖かっただろ?」
「・・・・・」
「はははっ、怖くて声も出ないんだね?まぁ、女の子だし仕方ないか。」
「・・・・・」

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