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俺は手すりの外側に出てかすかに残る足場に立っている。
ここから落ちたらものの数秒で死ぬ事が出来る。
俺は静かに両手を広げて身体を前に傾ける。

もう、戻れない。

悔いは無い。

もう、生きれない。

生きている意味が無い。

落ちたら死ぬ。

解ってる。

そして、落下を開始する。
凄いスピードで落ちる。
まるで自分が風になったかの様な感覚だ。
地面が近づいてきた。
もうすぐで死ねる。

その時、世界が変わった。

自分の周りの景色がゆっくりと写る。
そして、今までの事を思い出す。
これが、走馬灯と言うのだろうか?
記憶とは本来完全に無くなる事は無いようだ。
忘れているだけで絶対に頭の片隅に残っていると言う。
その証拠に忘れていたはずの事もつい昨日の事のように思い出す。
大学生の頃、高校生の頃、中学生の頃、小学生の頃、幼稚園児の頃。

そして、この世界に生まれ出でた時の事も・・・・・

母はとても幸せそうな顔をしていた。
しばらくしてから見た父もとても喜んでいた。
それから、二人は俺に名前をつけた。
二人は俺を中心にいつも笑っていた。
・・・二人は本当に幸せそうだった。

・・・・・・・・嫌だ。

・・・・死にたくない。

そして、世界が元のスピードを取り戻す。
叫んだ。

「・・・・・死にたくっ」

グシャ!!

即死で無いのは奇跡に近い。
全身がバラバラになったかのような感覚。
事実、バラバラなのだろう。
温いものが溢れだす。
世界は・・・・・暗い。

・・・・ごめん・・・

俺は沈む意識の中で謝った。

(完)
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