#11


・・・世の中所詮・・・


世の中なんて所詮金がすべてだ

金さえあれば何でもできる
何にだってできる
人の命も操れる


逆に言えば

何もできなかった

金がなかったせいで

今日の夜明け頃
私の横で


私の弟は死んだのだ。


何故弟が死ななければならなかったのだ?
何故?

弟の遺体の前で私が嘆いていると

義姉(あね)が長い髪をだるそうに
ダイヤがついたバレッタでまとめながら
真っ赤なドレスにヒールの高い靴を鳴らしながら近づいてきた

『可哀想そうにねぇ。まだ若かったんでしょうに。』

義母(はは)がぼさぼさの髪を琥珀でできた大きな櫛で
けだるそうにとかしながら目線だけをこちらに向けてきた

『ふぅん。やっとくたばったわけ。意外としぶとかったわ』

義兄(あに)がシルクのスーツに鹿の角でできたメガネを掛けなおすと
アンティークの腕時計をみて呟いた

『こんな朝から死ぬなんて全く迷惑な奴だ。貴重な睡眠時間だというのに。』

義父(ちち)は 起きやしなかった。



私はそんな『家族』に血走った瞳でこれでもかと睨み付けた。

私は嘆いた。弟の死とともに


彼らの『無関心』さに。



私たち兄弟にろくに食事も与えなかったくせに
狭い、暗い部屋に閉じ込めて

一日中私は日に日に体が弱っていく弟を励ます以外何もすることができなかった。
無力だった。守れなかった。

弟。なんで弟が死ななければいけなかったんだ?
世の中理不尽だ。世の中所詮金でしか…


私はそこでふと我に返った。
私は‘外‘に出ていた。
狭い、暗い部屋の‘外‘に。

もう長い間浴びることのなかった日の光に目が眩んだ。
私は『弟の死』によって『家族』が私の部屋の鍵を開けたことによって‘外‘に出ることができたのだった。


世の中所詮金だ。そう、『世の中』では。

此処は『世の中』の中の『家族』。


『金』ってのは事態を揉み消すもので
即効性はないのだ。

そう。

事が起きてからしか動かない―





世の中所詮金だ。

金がなかったせいで弟は、私の唯一の血縁者は死んだのだ。

でももう大丈夫だ。バックにこの家中のありったけの金目のものをつめてある。
これで当分金に困る必要はない。
弟のように死ぬことはもうないのだ。

私はもう動かない最愛の『弟』と『家族』を置いて家を出た。

弟の分までしぶとく生きてやるのだ。
紅く染まった掌を強く握って私は一歩を踏み出した。

踏み出す度に目から水が出た。
それを大きく拭って決意を固めると、私は上り始めた朝日に向かって前へ進んでいった。

もう振り返らない。





…成り行きなあとがき。…

今回は途中まで書いて長らく放置してしまったので
内容にまとまりがありません。謎!この一言に限る。
今見たら軽く半年ほど放置してた…オドロキ(・Д・)!
取り敢えず暗いハナシです。うん
お付き合い頂き有難う御座いました。

2012.3.12(mon)

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