▼7:エピローグ
あれから半年。

あの子は俺のところへは来なくなっていた。

これでいいんだ。
…これでいい。

最近は、晴れた日が続いていて
あの傘の出番もすっかり減ってしまった。

あの子があの日。決めた想い。
きちんと伝えられたのだろうか。

そなことばかりを考えていた。
あの日から、ずっと。
俺はあの子のあの日の告白を
あの日の慟哭を抱えて日々を過ごしている。

それがあの日の俺の決意だからだ。

ただひとつ。

今でもふと頭をよぎるのはあの日、
泣きそうに笑う彼女を追い掛けて、
俺の気持ちをさらけ出して
有無を言わさず「行くな」と
抱き締めていたら。

今も、今日も、ずっと俺の隣にいて、
一緒にココアを飲んでいたのだろうか。
…ということ。

俺がそうしなかったのはあの日の俺の決意
彼女がここに来なくなったのは彼女の決意。

それぞれの勇気。それぞれの決意。

俺は二つ。
ホットココアを用意してみる。
ホットココアの向こうに見えるのは
猫舌だと言って笑った彼女の笑う影。
・・・もうどうにもならない。
彼女はもうここにはいない。

「…あっちぃ。」

猫舌の俺はホットココアをすする。

「なんだ、君も猫舌なんじゃないの。」

そう言って笑ったように見えた影は
跡形もなく消えてしまった。

熱い、甘くないココアを飲みながら
あの日の俺の決意は
間違いなんかじゃない・・・と
自分に言い聞かせる。

今までずっとそうしてきたように
これから先もずっと。

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