6:決意
…今日も雨か。最近は雨ばかりだが、いやではないと思うのは、
元来の出不精のせいか、それとも…。
いろいろ想いをめぐらせていたら、
いつものように鳴ったインターホン。
…いつもより早いな。
ちょっとした違和感を抱きつつ、
いつものように迎える。
いつものように笑う彼女。
いつものように言う決まり文句。
いつものように本を読み、
いつものようにココアをすすり…。
出会ったころなら全く気付かなかったかもしれない。
でも、いつものようにしてる彼女が、
いつもとは違って見えた。
「あ。知ってた?あたし猫舌。」
「え?あぁ、なんとなくね。」
「なぁんだ。つまんないの。」
そう言って笑う彼女は、どこか寂しげで切なげで。
…ああ。そうか。
あの日と同じ顔なんだ。
「あたしね。言おうと思ってるの。自分の気持ち。」
「誰に?彼?友達?」
「…どっちにかな?」
「言うなら両方に。言わないなら両方に。」
俺の言葉を聞いて、口をとがらせた。
「うーん。そうかー。難しいな。」
「どっちみち、つらいことには変わりないけど。
進むも地獄。戻るも地獄。」
そこまで言ってなんとなく感付いていた自分の気持ち。
俺だって。同じ想いでいる。進むも地獄。戻るのも……。
でも、それを今言ったところでどうにもならないんだ。
…そんなこと、わかってる。
「でも、言うことにする。
じゃないと、こんな気持ちのままだと
二人を祝福できないから。」
「祝福?」
「そう。二人とも、大切な人だから。」
この子は、自分の気持ちを言うと決めた。
…だったら。
笑って帰ると言ったその子の顔は
何かを決意した顔だった。
俺はいつものように何も言わずに
帰る彼女の背中を見ていた。
「……祝福?そんなこと出来るわけがないだろ。」
こらえていた気持ちが、感情が、言葉となって口を伝う。
そう。
俺はいつしか彼女の事を好きになっていた。