5:甘くないココア
それからというもの、何故か彼女は俺の家に来るようになった。
来るたびに、キョロキョロと周りを見回し
「何もない部屋だね。」と言う。
俺の部屋は無機質なアルミの本棚とテレビ。
それにテーブルと椅子。そんなもんだ。
会話がはずむ…ということもあまりないが、
俺の「蔵書」は彼女を飽きさせないみたいだ。
「コーヒーのむ?」
「…あるの?飲めないんでしょ?」
「え?…俺はね。でも客用にはあるよ。」
「来るんだ。誰か。」
「……。」
「ごめん。君と同でいい。甘くないココア。」
…甘くないか。
今日、分かったことが2つ。
意外におしゃべりなこと。
そして、なんとなく見ていたのは
俺だけではなかったのかもしれない
と、いうこと。