▼1人だけの町
あぁ 1人だけの町よ
中心の高い高い建物に ぽつん
誰かが 誰かが住んでいる
かつて栄えた頃の 名残も見ずに
昔 人がたくさんいました
町には王様じゃないけど 王様みたいな人がいて
人々は毎日のようにその人を訪ねた
“こんにちは”“元気ですか?”
毎日 毎日
だけど だんだん人々は来なくなって
王様も喋らなくなって
ますます 人が減って
独りぼっちなのは 王様です
彼は王様ではないけれど 王様ぐらいに
この町を愛していました
誰かがやってくると 直ぐに気付けるようにと
王様は高いところへのぼりました
そして今日も彼は 窓から町を見下ろします
あぁ ひとりだけの町よ