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「えええええええええええええっ!うっそでー」
「嘘じゃないですよ。あー、もう」
「えーマジ?マジであのリュウが桜庭ぁ?」
「マジですよ」
「うっわー。ホントかよ、すっげーっ!すっげーっ!」
思わずオレは笑顔になった。だってうれしーじゃん。なつかしーじゃん。なーんだよ、桜庭ってあのリュウか!じゃあ、おれのコトずっと睨むみたいに見てたのって……、嫌ってるとかじゃなくて、おれがコイツのコト気がついてやらなかったからなのか。そっかー納得。なんだー、桜庭がリュウかよー。
「なーんだよ、サッサと言ってくれてればおれだってオマエのコト苦手ーなんて思ったりしなかったのに」
黙って睨んでないでそう言ってくれればよかったのにーって言ったら桜庭は桜庭で「あああああ、そうかよ。思い出しもしなかった上に、オレのことホントは苦手だったのかよ。すっげえショック」なんてぼそぼそ言ってたけどそんなのおれの耳には届いてなかった。
だってリュウのコト、思い出したらなんかすげえ懐かしいっていうかなんていうか、当時のコトめちゃめちゃ思い出してきて。意識なんて昔に戻っておれの頭の中、うわー、なっつかしーっていうの一色になって。突っ込まれたままなのも正直忘れてた。……単細胞、馬鹿と言うなら馬鹿と呼べ。
「言われてみれば目の辺りとか面影あるカンジ?でもあの頃のかわいーリュウだなんてわっかんねーなー言われなきゃ。今のオマエ全然違うじゃんか。いけすかねぇツラした男前に育ちやがって」
いけ好かないかよそーかよ、ってやっぱり桜庭はぼそぼそ呟いて。で、桜庭の顔つき、どんどん悪くなっていくのにもおれは気が付きもしなかった。
「あーでもなっつかしーなー、リュウ、結構気に入ってたんだよなーおれ。大体チビどもはみんな『カズさんカズさん』とかって言ってすーぐ和成にひっついていっちゃったんだけどさ。リュウだけは最後までずーっとおれの後をぽてぽてくっついて歩いててさー」
あー……。ホントオレって馬鹿で単純。桜庭の不機嫌、気がつかない。そんでもって本気で突っ込まれてることなんて忘れてた。
「だからっ!遊びとかじゃねーんですっ!あーっもうホントにまったくアンタはさー」
桜庭は頭がりがり掻いて。苦虫潰して。
「どーせオレのことなんてアンタ欠片も覚えてなかったんだろ。今まで思いだしもしなかったんだろ。オレはずっとこーちゃんひと筋だったってのに。ほんと昔っからカズ先輩のことしか見てねえしなアンタはっ!」
「あー、えー?ご、ごめん?」
「もーいーです。オレはアンタに関しては勝手にやります。言っとくけどカズさんはもう今泉に惚れきっちまってるから諦めてよ。そんでオレのこと好きになって。以上終了!」
「なんだよ終了って」
「そんでもってこっち再開。動くからね、こーちゃん」
「へ?」
あああああああ、そーいえばおれ、コイツに突っ込まれたままだったあああああ。いきなり律動再開した桜庭におれはうわああああって、叫んで。
……で、男のサガって仕方ないね。気持ちよーくなっちまって思いっきり吐き出しちまいましたとさ。しかも一回や二回じゃなくて何回も。あー……。桜庭は、おれにムカついたのか何なのか、容赦なく限界まで足腰立たなくなるまで貪ってきやがって。……チクショウコノヤロー。ハジメテだっつーのにいきなりこれかよ。あー……。
ま、だけど。
だけど、な。
こーゆーのもいっかななんておれは最近思いはじめてきたりして。
なんつーの?愛される幸せっての?ちょっと嬉しいかな、とかなんとかだんだん絆されてきちまって。
足腰限界まで貪られるのは勘弁だけど、そのうちおれもこーゆーことに慣れてきちまって。
あ、はははははははははははは。
……あーあ、おれも色ボケだ。
ため息一つ吐き出して、そんでもって桜庭に押し倒される今日この頃のおれの日常。



− ACT,4 今泉明良に続く −




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