空へのこたえ 遅刻
 頑張れば、一番になれるのだろうか――?
 僕は心の中で小さくつぶやいた。


 そんなはずはない。
 僕の胸に、さびしげな一言が痛いほどよく響いた。
 そんな僕の心の中が、今、からっぽになっていくのを感じた。


「ちょっと…起きろよ、集合時間過ぎてるって!」
 体がぐらぐらと揺さぶられて、僕は目を開けて朝日を確認する。今日もかわりなく部屋はほんのりと暖かい。頭は現実逃避して、僕を再び眠りの世界へと運び込もうとする。
 再び体がぐらぐらと揺れた。隣から、大きい声が響く。
「今日遅刻したら、ヤバイの分かってるだろ!」
 耳がわんわんして、僕の頭と体が完全にONとなる。これが目覚めだ、と僕は少しもったいない気がしながら実感する。
 僕は口をあけた。
「…おはよう」
 目の前にある机、そして友達の顔をみて、僕は自分が今学校という場にいることを確認した。それが分かると、頭は思いもよらぬほど回転が速くなった。
 壁にある時計は、丁度3時になろうとしていた。
「さっさと用意しろよ。授業中に寝てるお前が悪いんだからな」
 僕は、友達――恭太がかかえていた数学の教科書とノートを見て、ようやく机の中からそれらを取り出した。
 表紙の青い背景に浮かんでいる球体と三角の図形たち。
 ――この世に数学が必要なんて、いったい誰が決めたんだ。
 そう心の中でいらだちながら、僕はペンケースを持って立ち上がった。
「チャイム鳴るぞ」
 恭太の声をきいて、僕らの他には誰もない教室を後にした。
スポンサード リンク