▼1
遠くで音が聞こえる。たくさんの人の声も聞こえる。どこかで感じたことがあるこの感覚。
あぁ、ここはライヴ会場の外か何かかと気づく。何故こんなところにいるんだろうか。
そんなことはどうでもいいな、と思ってしまう自分がいた。


目の前に何も見えないから僕は目をつぶっているのだろうか。
それとも暗いところにいるのか。



途端に視界に一人の何かが現れた。何かは一瞬では分からなかったが人なんだと感じた。
一人の男だった。男だと僕は思う。顔というか表情というかなにかが欠けている顔だった。
数秒間、男と僕は見つめ合っていた。それ以外に僕にはなにも出来なかった。

その数秒間は嫌ではなかったが何処か気持ち悪くて数分に感じた。

自然と僕は後ずさりしていたらしく何かにぶつかった。





その途端、男の顔が変わった。



実際は表情が変わったというべきなのか。今思ったが男は顔の形を保てていないのだ。
だから表情が変わった途端に顔が変わったと僕は思ったんだろう。

頬がもちあがって、穴があいていた。あな・・・?笑窪?



そう、男は笑ったんだ。これほど人の表情を読み取るのに苦労をしたのは初めてだった。
スポンサード リンク