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嫌だ、来るな。

声が出ない。

嫌だ、気持ち悪い。


声は出ない。



男の顔が僕の顔のまん前まで来た時、また男は笑った。
一滴の水が垂れた。

途端にぬぐって自分の手の甲を見ると赤かった。


思考回路が追いつかない。なんだろう、これは。
そう思ったとき、血の臭いがした。



あぁ、血だ。



嗅ぎ慣れた血の臭いだ。

血を見るのは好きだった。


血の臭いは嫌いだった。





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