▼ラバースカイ(オリジナル小説) 惑わせることすら
おじさんは、弱った僕を売ろうと思っていたようだった
僕は自身が盲目であることを伝えた
そんなことを言われたおじさんは僕が本当に目が見えないのか確かめ、売り物に
ならないと考えたのか、僕を解放した
僕は傷だらけでそこに放置された。痛いけど動くことはできたから、さっきと同じ位置に戻って座った
「そこ、邪魔なんだけど」
僕よりは随分年上のようだが、まだ子供の声だった
「僕が邪魔?」
「邪魔」
「じゃあ動かない」
「何で?」
子供だからなのか。こんな風に純粋に何故なのか聞かれたのははじめてだ
「僕は苦しんでいる。そんな僕と同じ苦しみを味あわせるため」
「俺はお前の苦しみは分からない。でも、お前に俺の苦しみが分かるのか」
「君が苦しんでる訳がない。だって前が見えてるのだから」
「お前は俺ではないのに何故そう言い切れるんだ」
「だって僕が苦しんでるのは、前が…何もかも、光さえ見えないからだ。君は目
が見えるんだから、僕の苦しみは分からないだろう」
僕の苦しみは、ひょっとしたら同じ盲目の人間にも分からないかもしれない
「お前の苦しみなんか分からない。でも何で分からなければいけないんだ」
「僕が報われないからだよ」
今まで伏せていた顔をあげて笑顔で言った